英財務相、年金を中心とした金融改革を発表、非上場企業への投資促進
(英国)
ロンドン発
2023年07月21日
英国のジェレミー・ハント財務相は7月10日、ロンドン市長官邸「マンション・ハウス」で演説し、英国の競争力強化に向けた金融分野の改革「マンション・ハウス改革」について述べた。2022年12月に発表したエディンバラ改革(2022年12月13日記事参照)に基づき、年金、上場、規制の3分野について取り組む。
年金については、英国が欧州最大の年金市場の一方、他国に比して機関投資家による投資を十分に得られていないことや、一部の確定拠出型年金では期待するほどのリターンが得られない可能性があることなどを踏まえ、以下を含むさまざまな取り組みを示した。政府はこれらの取り組みにより、2030年までに企業への投資額が750億ポンド(約13兆5,000億円、1ポンド=約180円)拡大する可能性があるとした。
- 確定拠出型年金の運用会社と「マンション・ハウス・コンパクト」に署名。2030年までにデフォルトファンド(注1)の少なくとも5%を未公開株に充てることにコミットするもの。政府は他の運用機関も追随した場合、500億ポンドが未公開株に投資されると推計。
- より明確な基準に基づいて確定拠出型年金の比較を可能にし、競争を促す枠組み「バリューフォーマネー(Value for Money)」の意見公募に対する回答を公表。
- 確定給付企業年金について、恒久的なスーパーファンド(注2)に関する規制制度導入を検討。
- 地方政府年金の資産を2025年3月までに統合する計画に関する意見公募を実施。
- 地方政府年金基金からプライベートエクイティへの投資割合を10%と、倍増する計画について意見公募を実施。
上場については、目論見書(注3)にかかる改革に向けた法案を発表するほか、上場前の企業の資本市場へのアクセス改善を図るプラットフォームを2024年末までに設置するとした。
規制については、6月に成立した金融サービス・市場法を紹介、約100のEU由来の法令の撤廃に向けた取り組みを開始すると発表。さらに、支払い技術に関するレビュー実施や、革新的な支払い技術やフィンテックに関する規制改革について金融当局の権限を拡大するための法案提出のほか、デジタルポンドに関する設計をイングランド銀行(中央銀行)とともに検討するとした。
(注1)年金加入者が運用方法を指定しない場合に、あらかじめ定められた方法で行われる運用方法。
(注2)確定給付企業年金にかかる雇用主の年金負債を移転し、統合するためのスキーム。
(注3)有価証券の販売に際して、発行者や証券のブラック ジャック 賭け 方を説明する文書。
(山田恭之)
(英国)
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