メキシコ市国際空港の貨物専用便発着禁止措置を40営業日延期

(メキシコ)

メキシコ発

2023年07月11日

メキシコ政府は7月7日の官報で政令外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公布し、2月2日付官報公布の政令を改正し、メキシコ市国際空港(AICM)の貨物専用便の発着を禁止する措置の適用を40営業日延期した。2月2日付の政令はAICMの混雑緩和を目的として、同施行日(2月3日)から108営業日以内に貨物専用便の運航をAICM以外の空港に移転することを命じるもの(2023年2月6日記事参照)。当初は7月7日が移転期限だった。今回の政令に基づき、2023年9月1日がAICMで貨物専用便の発着が許される最後の日となる。

適用延期の背景には、AICMの代替空港としての活用が想定されているフェリペ・アンヘレス国際空港(AIFA、2022年3月23日記事参照)で民間事業者(物流事業者、通関代理店)の輸入オペレーションが完全に開始されていなかったことがある。AICMで貨物専用便の発着を現時点で禁止すると、事業者にとって大きな影響が出ることがある。AICMは旅客と貨物の双方を輸送するエアラインが運ぶ貨物の通関にとっては重要な空港のため、通関代理店はAICMの業務をAIFAに完全に移転することはできず、AICMに加えてAIFAに通関士やその助手などを常駐させる必要がある。同様に物流関連事業者も、AICMに加えてAIFAに拠点を開設する必要が生じるため、民間事業者にとってはコスト負担が大きく、対応が遅れている。事業者によっては、AIFAに到着した輸入貨物をスタッフが常駐するAICMに陸路で保税転送し、AICMで通関手続きを行うなどの対応が現時点でも行われているようだ。このような現状を受け、政府も猶予期間の延長に踏み切ったようだ。

特定商品の通関、現時点もAIFAでは不可能

メキシコ国家税関庁(ANAM)のサウル・アギレラ・カミージョ税関運営課課長補佐によると、AIFAには税関の十分なインフラが整備されており、どのような貨物の通関も実施できる。AIFAからAICMへ貨物を保税転送し、AICMで通関をしている場合、それは民間事業者の個別事情によるもので、AIFAのインフラや能力に起因するものではないという。

しかし、現時点でもメキシコの国内法規上、AIFAでは輸入通関が許されない貨物がある。2023年の貿易細則(RGCE2023)添付21に基づき、現時点でも放射性物質や前駆体、たばこ、アルコール飲料、炭化水素・燃料はAIFAでは輸入が認められない品目で、これらをAIFAで取り扱うにはRGCE2023の改正が必要だ。9月1日までにRGCE2023が改正されない場合、日本から日本酒や焼酎などAIFAで輸入通関できない貨物をメキシコ市首都圏に輸出する場合、貨物専用便を利用するとAICMには着陸できず、AIFAでも通関できないため、AIFAからAICMへ陸路で保税転送してAICMで通関するか、AICM以外にアルコール飲料の通関が可能なメキシコ州トルーカ国際空港に送る必要がある。

(中畑貴雄)

(メキシコ)

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