ステランティス、ウィーンのオペル工場閉鎖を発表
(オーストリア)
ウィーン発
2023年07月03日
自動車大手ステランティスの子会社ステランティス・オーストリアは6月28日、ウィーンにあるオペルのギアボックス工場を閉鎖する計画を発表した(プレスリリース)。閉鎖する理由として「自動車市場の電気自動車(EV)化への転換によって、燃焼エンジン用のギアボックスの製造に将来性がない」ことを挙げている。労使協議会と緊密に連携を取りながら、今後数週間以内に包括的なソーシャルプラン(解雇プログラム)を立案し、従業員300人に対して再訓練の提供や就労支援センターの設立などの支援策を準備する。
「デア・スタンダード」紙(6月28日付)によると、ウィーンの東部アスペルンにあるオペル工場は、当時の社会民主党政権によって1979年に誘致された。当時、米国ゼネラルモーターズ(GM)の一部だったオペルでは、1980年代に従業員2,000人以上が同工場で雇用されていたという。その後、2017年にフランスのPSAグループに買収され、2021年にステランティスの一員にはなったものの、近年はウィーン工場の規模を縮小し始めた。また、2020年にはGMからの大規模な注文がなくなっており、燃焼エンジンの生産は停止されている。加えて、新型コロナウイルス感染拡大や、半導体不足によって経営状況はさらに悪化した。
このオペル工場の閉鎖によって、オーストリアの自動車産業の黎明(れいめい)期を代表するステランティス・オーストリアは終焉(しゅうえん)を迎えたという見方も出ている。
オーストリアの自動車産業の業界団体によると、同国の自動車産業は、2021年の従業員数3万7,500人、生産額は174億ユーロで、主要な産業だ。エンジンとトランスミッションは総生産の大きな割合を占めている。フラウンホーファー・オーストリア研究所の調査では、EVへの変換は自動車業界の最大の課題とされている。現在、シュタイヤー市で年間100万基以上のエンジンを生産するドイツのBMWは、2025年から年間60万基の電動駆動装置を生産する予定だ。オーストリアの完成車メーカーのマグナ・シュタイヤーのように、既に2017年からジャガーePaceの生産を始めており、EVモデルを生産している例もあるが、エンジン生産に関わっている企業はまだ多い。フラウンホーファー・オーストリア研究所の調査によると、EUが掲げる2035年の全新車のゼロエミッション化(関連ブラック ジャック web)に向かって、オーストリア自動車産業のEV変換の準備は不充分だとしている。
(エッカート・デアシュミット)
(オーストリア)
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