政府、2030年の再エネ発電やグリーン水素設備容量目標を3倍に引き上げることを提案
(スペイン)
マドリード発
2023年07月13日
スペイン政府は6月28日、2050年までのカーボン・ニュートラル(炭素中立)達成に向けた2030年の中間目標を定めた「国家エネルギー・気候計画(PNIEC)2021-2030」の改定案を公表した(注)。PNIECは、2030年までの部門別エネルギー政策および投資の指針となるものだ。
同計画が採択された2021年3月以降(2030年までの排出削減の約4割担う再無料 ゲーム)、EUレベルで気候変動対策パッケージ「Fit for 55」が策定され、移行目標がより強化された。ウクライナ情勢によってエネルギー安全保障をめぐる状況が大きく変わり、ロシア産化石燃料依存からの早期脱却計画「リパワーEU」が推進された。また、近年の再生可能エネルギー(再エネ)発電投資ブームにより、スペインでは再エネ発電設備の導入が極めて好調となっている。改定案にはこうした変化が織り込まれ、目標が大幅に上方修正された。2030年目標の大枠は次のとおり。
- 温室効果ガス(GHG)排出削減割合(1990年比):従来目標23%から32%に引き上げ
- 最終エネルギー消費に占める再エネ比率:42%から48%に引き上げ
- 一次エネルギー消費の削減率:39.5%から42%に引き上げ
- 総発電量に占める再エネ比率:74%から81%に引き上げ
- 対外エネルギー依存度:61%から51%に引き下げ
太陽光発電設備は2030年までに7倍増
改定案でも2030年までのGHG排出削減の6割方は従来どおり「発電部門」、つまり再エネ発電の導入拡大を通じて目標達成を目指す。再エネ全体の総設備容量〔2020年では62ギガワット(GW)〕は、これまでの2020年比で2倍(125GW)という目標から、新たな目標では3倍(179GW)とした。特に、太陽光(2020年で11GW)の導入目標は、従来目標(39GW)の2倍近くの76GW、風力(2020年で27GW)もこれまでの目標(50GW)から2割増の62GWに引き上げられた。一方、従来型発電(2020年で53GW)はこれまでと同様、石炭火力の2025年までの完全廃止、原発の半数以上の閉鎖などにより、35GWまで縮小される見通しだ。
再エネの系統接続拡大に加え、自家発電容量も19GWに拡大が見込まれる。並行して、揚水発電や蓄電池、溶融塩を用いた太陽熱発電などの蓄電能力を2020年比4倍近くの22GWまで高め、再エネ電力供給の安定化を図る。グリーン水素の水電解能力も従来目標(4GW)から11GWと約3倍に拡大され、産業部門の水素消費の74%がグリーン水素に転換されるとしている。
同改定案は今後、パブリックコメントや欧州委員会の承認を経て、2024年に最終版が採択される。
(注)EU加盟国は、2023年6月30日までに現行の国家エネルギー・気候計画(英語ではNECP)の改定案を欧州委員会に提出することが義務付けられていた。
(伊藤裕規子)
(スペイン)
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