中東アフリカの多くの国で食品価格が高騰、世界銀行の報告
(中東、アフリカ、ジンバブエ、エジプト、レバノン、トルコ、ルワンダ、ブルンジ、シエラレオネ)
調査部中東アフリカ課
2023年07月20日
世界銀行が7月17日に発表した食糧安全保障に関する報告によると、入手可能な最新月のインフレデータでは、低所得国のうち6割以上の国々でインフレ率が5%を上回った。さらに、全体の約8割の国では、全項目のインフレ率よりも食品のインフレ率が高かった。
中東アフリカ地域でも多く国で食品価格が高騰した。特にアフリカでは干ばつや洪水、紛争などの影響による食糧危機が継続しているという。また、ロシアとウクライナから穀物輸入が多かった国やエネルギー輸入国で、物価が上昇した。通貨の急落によって輸入品の価格が高騰したケースもある。
前年同月比の実質食品インフレ率(注)の世界上位10位は次のとおり。
- ジンバブエ:前年同月比80%
- レバノン:同44%
- エジプト:同30%
- トルコ:同16%
- ルワンダ:同15%
- ブルンジ:同14%
- ラオス:同14%
- シエラレオネ:同11%
- 英国:11%
- ギリシャ:11%
同報告では、ウクライナ危機以降、自国の食糧確保のため、世界で20カ国が食品の輸出禁止措置を実施、10カ国が食品の輸出制限を実施しているという。また、今後の見通しとして、肥料コストの上昇が食品価格につながる可能性を示唆している。
世界銀行は国際的な食糧危機への対策として、2022年に300億ドルの金融支援を表明している。中東アフリカ向けの農業生産や食糧供給の支援に関する案件も多い。これまでの主な支援案件は次のとおり。
- 東南部アフリカでの食糧システム強靭(きょうじん)化プログラム:23億ドル
- 西アフリカでの食糧システム強靭化プログラム:7億6,600万ドル
- エジプト:5億ドル
- チャド、ガーナ、シエラレオネでのプログラム:3億1,500万ドル
- ボリビア:3億ドル
- イエメン:1億5,000万ドル
- チュニジア:1億3,000万ドル
- ヨルダン:1億2,500万ドル
- タジキスタン:5,000万ドル
(注)同報告書では、名目食品インフレ率から、全ての項目を含む全体のインフレ率を差し引いた値を指す。世界銀行が報告書作成時点で入手可能だった2023年3月から6月のうち、各国の最新の公表値。
(井澤壌士)
(中東、アフリカ、ジンバブエ、エジプト、レバノン、トルコ、ルワンダ、ブルンジ、シエラレオネ)
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