ルーラ政権、農業低利融資計画を発表、予算規模拡大で小規模生産者を優遇

(ブラジル)

サンパウロ発

2023年07月12日

ブラジル政府は6月27から28日にかけて、2023/2024年農業計画(プラーノ・サフラ)を発表した(注1)。新農業計画の発表には、カルロス・ファバロ農業・畜産相に加えて、ルイス・イナシオ・ルーラ・ダ・シルバ大統領も出席した。

プラーノ・サフラは、ブラジルの最重要農業政策の1つ。主に当該年度の農業融資額とその利子を決めるもので、政府の方針が予算配分に反映される。農業生産者の多くは農作物の作付けの資金を融資に頼ることが多く、低利に設定されるプラーノ・サフラの融資が重要だ(注2)。政府は大規模、中規模、小規模の家族農家に分類した上で政策を計画し、小規模の生産者ほど利子や割賦年数などの好条件で融資が受けられる。プラーノ・サフラでは、大きく分けて生産コスト・販売と投資向けの資金が用意されている。

プラーノ・サフラは、2022年まで農務省(MAPA)が一括して管轄し、大・中・小規模生産者向けの政策を統括していた。だが、ルーラ政権下では、省庁再編によって農業開発・家族農業省(MDA)が創設され、小規模の家族農家向けの施策は同省の管轄になった。ジェトロ・サンパウロ事務所の農林水産・食品コーディネーターで、ポンチプロンタの福井真司代表に7月6日付でヒアリングしたところ、「MDA創設を通じて小規模の家族農家向けの政策を切り出したことは、ルーラ大統領が家族農業対策を農業政策ではなく、貧困対策として捉えていることが読み取れる」とコメントした。

同年度の総予算は、大・中規模生産者向けが前年比26.8%増の3,642億レアル(約10兆5,618億円、1レアル=約29円)、小規模生産者向けが前年比34%増の716億レアルとなった(6月29日付現地紙「バロール」)。インフレ率を大きく上回る金額を設定したことで、現政権が農業分野を重視していることが分かる。また、同年度のプラーノ・サフラの特徴は、予算の増額に加え、かつては「Plano ABC」という名称で農業融資を活用した低炭素排出農業プログラムだったものを、脱炭素や持続的な生産を目的とする持続可能農業生産システム資金調達プログラム(ヘノバアグロ)と名称を変更して、69億3000万レアル(年利7.0~8.5%)の予算を手厚く割り当てている。ここからも、ルーラ大統領が積極的に環境問題に取り組む姿勢が明らかだ。さらに、ブラジルでは従来、穀物の貯蔵サイロ不足が指摘されているが、今年度は倉庫建設・拡張計画(PCA)への融資も増額されている。

(注1)収穫年は7月~翌年6月

(注2)プラーノ・サフラの資金が全ての生産者に行き渡るわけでなく、穀物生産者などは足りない資金を生産物と資材などを交換するバーター取引によって確保していることが多い。

(古木勇生)

(ブラジル)

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