欧州産業界、EUのデューディリ21 トランプンス指令案にあらためて懸念を表明
(EU)
ブリュッセル発
2023年06月01日
ビジネスヨーロッパ(欧州産業連盟)など欧州で活動する36産業団体(注)は5月25日、欧州委員会が2022年2月に発表した企業持続可能性デューディリ21 トランプンス(DD)指令案(欧州委、人権・環境デューディリブラック)について新たな共同声明を発表した。同指令案については、EU理事会(閣僚理事会)が2022年12月1日、EU理事会としての立場を採択。欧州議会が2023年5月31日~6月1日に開催される本会議で立場を採択すれば、同指令案の成立へ向けた両者の協議が開始される。
立法プロセスが進む中、声明に署名した団体の一部は2023年1月に同様の共同声明を発表していたが(欧州27産業団体、欧州委のデューディリブラック)、新たにエネルギー、製薬、農業などの団体が加わり、同指令案に対する欧州産業界の懸念の大きさをあらためて示した。36団体は指令案の目的には賛同を示したうえで、適用対象外とされる中小企業も含めた産業界は、政策の目的と手段のバランスが取れた実行可能な人権・環境DD枠組みを必要としていると述べた。その上で、次の6項目を提言し、今後の協議において考慮することを求めた。
- EUレベルで完全に調和したルールを適用する。
- 「リスクベース・アプローチ」を採用し、企業が最も顕著なリスクを特定し、優先的に対応することを可能とする。関連企業やステークホルダー間で連携して、企業が人権・環境DD関連のルールを順守することができる仕組みの明示。
- 企業が直接関与しない損害については責任を問わないようにするなど、企業の責任に関する条項を見直す。
- 人権・環境DDの実施にはあらゆる利害関係者の参画が必要だが、条文を明確にし、企業に対する提訴の乱発を招かないようにする。
- 法的な明確性は最重要事項で、国際的な条約やEUの他の法令との一貫性を持たせる。指令案の付属書にある、人権・環境DD実施の根拠とする条約リストから、国家を対象とするものを省くなど見直す。企業がルールを確実に順守し、またEU加盟国当局が企業の順守状況を適切に評価できるように、企業および加盟国当局に対する指針を示す。
- 人権・環境DDの枠組みにおいて、企業の取締役に課す責務を規定すべきではない。
(注)在欧日系ビジネス協議会(JBCE)など、欧州で活動する第三国の産業団体も含む。
(滝澤祥子)
(EU)
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