最高裁、選挙制度改革を違憲と裁定
(メキシコ)
メキシコ発
2023年06月26日
メキシコの最高裁判所(SCJN)は6月22日、3月2日付官報で公布された憲法改正を伴わない国家選挙庁(INE)の機構改革や選挙制度の改革を目的とした一連の法改正(通称「プランB」、)を違憲とした(注1、最高裁プレスリリース6月22日付)。この件については、野党や国家ギャンブル ゲーム 無料公開庁(INAI)が提訴していた。
最高裁は、本会議で審議、採決される前に最終法案が公開されることはなく、全ての議員が法案の内容を知る機会がなかったと述べた。また、6本の法律の510を超える条項の改正にもかかわらず、全ての法案が「緊急」とされ、内容を事前に明らかにして真摯(しんし)な議論をしてほしいという少数派の意見に耳を傾けず、委員会審議を経ることなく本会議で採決されたことなどにも言及した。今回の違憲判決により、一連の法律は改正施行前の2023年3月2日時点の状態に戻る。また、2024年6月に予定される大統領選挙や国会議員選挙など総選挙は従来の法律に基づいて行われる。
大統領や与党はプランCを強調、経営者連合会は市民社会の声を反映した裁定を評価
アンドレス・マヌエル・ロペス・オブラドール(AMLO)大統領は6月23日、今回の違憲判決を受けて、2024年9月から始まる2024年総選挙後の新国会(注2)で、与党連合が3分の2以上の議席を獲得して一連の憲法改正を実現すること(プランC)を目指し、その中で最高裁判所の判事を国民投票で選出し、一部の反対派の見解ではなく民意を反映した司法を取り戻すことを強調した(大統領府2023年6月23日付記者会見録)。与党・国家再生運動(Morena)も最高裁の裁定を遺憾とし、プランCの実現を目指して与党連合が結束して2024年の総選挙に臨む考えを表明した(Morenaプレスリリース6月22日付)。
他方、メキシコ経営者連合会(COPARMEX)は6月23日付でプレスリリースを出し、4月11日に全国企業弁護士協会(ANADE)など複数の市民組織とともに提出した意見書の内容が反映され、憲法が定める立法プロセスの重大な違反が違憲裁定の根拠として採用されたことを評価し、「憲法の尊重は、われわれが生きると決めたこの民主的な生活を維持するための根本的な柱だ」と強調している。
(注1)11人の判事のうち、9人が違憲、2人が合憲としたが、違憲裁定は11人中8人が賛成すれば成立する。今回、最高裁は憲法第71条と第72条が定める民主的な審議の原則を国会が破ったとし、立法プロセスは国会の全政党・派閥の多様で平等な参加を必ず保証しなければならないとしている最高裁の判例を考慮しても、一連の法改正は違憲と裁定した。
(注2)AMLO大統領の任期は2024年9月末までのため、2024年6月に予定されている上下両院全議席を改選する総選挙後に初めて開会される新国会の会期(2024年9~12月)では、最初の1カ月だけ大統領を務めることになる。
(中畑貴雄)
(メキシコ)
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