核融合開発で産官学連携、AIなどのデジタル技術活用へ
(英国)
ロンドン発
2023年06月30日
英国原子力公社(UKAEA)は6月28日、英国での核融合発電施設のプロトタイプ開発進展に向け、スーパーコンピューティングや人工知能(AI)などのデジタル技術を活用することを発表した。
英国のノッティンガムシャー・ウエストバートンにあるUKAEAの球状トカマク型(注1)エネルギー生産(STEP:The Spherical Tokamak for Energy Production)施設が対象。メタバースを用いた発電設備の開発を手掛ける。UKAEAはデルやインテル、ケンブリッジ大学との連携により、超高性能スーパーコンピュータやAI技術を用いて「STEP」の設計で「デジタルツイン」(注2)を実現する手法について研究する。この技術によって、費用対効果を確保しながら、2040年代に核融合による電力を送電網へ供給するという目標の達成に向け、仮想空間上で強固な設計を行うことができるという。
また、次世代コンピューティング技術のエクサスケールコンピューティングを用いて、STEPの初期コンセプトを試験するための分析を行う。
核融合エネルギーは、風力や太陽光のような再生可能エネルギーを補完するベースロード電源となる可能性を持つとされている。UKAEAは、今回の連携によってSTEPのサプライチェーン全体を通して、科学者やエンジニアが温室効果ガス(GHG)排出を削減しながら世界のエネルギー需要の増大に対応するのに必要な高度な研究開発を行うことができるようになるとしている。
また、6月8日には、核融合に関する革新的なソリューションや技術を概念実証(PoC)段階まで開発するために、7つの組織がUKAEAとの契約を獲得したことが発表された。契約規模は全体で680万ポンド(約12億4,440万円、1ポンド=約183円)。
(注1)トカマクとは、環状の電流を有する磁場を閉じ込める方式の1つ。プラズマを閉じ込め、核融合プラズマを生成する。
(注2)デジタルツインとは、「デジタル上の双子」の意で、物理的なモノと空間をデジタル上に再現し、シミュレーションや管理などを行う技術。
(菅野真)
(英国)
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