米国務省、ブリンケン長官の訪中を総括、対話継続で合意も課題残る
(米国、中国)
ニューヨーク発
2023年06月21日
米国国務省は6月19日、アントニー・ブリンケン国務長官の中国訪問を総括する声明を公表した。ブリンケン長官は18~19日に習近平国家主席や、王毅・共産党中央政治局員、秦剛・国務委員兼外交部長と面談を行った()。国務長官の訪中は、トランプ政権下の2018年にマイク・ポンペオ長官(当時)以来初となる。
国務省によると、双方は2国間関係や幅広い国際的・地域的な課題について、率直で建設的な議論を行った。ブリンケン長官からは、計算違いのリスクを下げるために、あらゆる分野で対話チャネルを開放し続ける重要性を強調した。中国と合意した点としては、2022年11月の両国首脳会談で議論された2国間関係を規律する原則を構築するための協議の継続を挙げている。また、双方は作業部会を通じた特定の課題での進展とともに、人的交流の強化を歓迎した。気候変動や国際マクロ経済の安定、食糧安全保障、公衆衛生、麻薬対策などの越境問題でも協力すべきことを強調したとしている。一方で、ブリンケン長官は次の点について、中国に懸念を伝えた。
- 中国で米国市民が誤って拘束または国外移動制限を受けている事件
- 米国でフェンタニル危機を引き起こしている違法ドラッグの流入を防ぐための協力
- 中国の不公正で非市場経済的な慣行と米国企業への措置
- 中国の新疆ウイグル自治区、チベット、香港などでの人権侵害
- 台湾海峡の平和と安定の重要性
- キューバでの中国の諜報(ちょうほう)活動
ブリンケン長官はこれらに加えて会談後の記者会見で、サプライチェーンのデリスキングと多様化の考えに沿って、米国の重要技術が中国に悪用されないよう、今後も的を絞った対応をしていく点を伝えたと述べた。声明の最後では、対話継続のためにブリンケン長官から秦外交部長にワシントン訪問を呼びかけたとしており、双方はしかるべき時期に相互訪問を計画することで合意したとしている。
冷え切っていた米中関係がようやく定期的な対話の再開に向けて動き出したことになる。しかし、ブリンケン長官自らも重要な点として、今回の訪問で両国の軍同士の対話再開について中国側の合意を得られなかったことを挙げている。6月20日には「ウォールストリート・ジャーナル」紙(電子版)が、中国がキューバとの間でキューバに軍事訓練施設を設置する交渉を進めていると報道した。訪英中のブリンケン長官はこれを認めた上で、中国には深刻な懸念を伝えたとしている。両国関係の改善には、まだ多くの課題が山積しているといえる。
(磯部真一)
(米国、中国)
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