米USTR、グルポ・メヒコの鉱山での労働権侵害の疑いでメキシコ政府に確認要請

(米国、メキシコ、カナダ)

ニューヨーク発

2023年06月19日

米国通商代表部(USTR)は6月16日、メキシコの鉱山開発最大手グルポ・メヒコが同国中部サカテカス州に有するサンマルティン鉱山で労働権侵害の疑いがあったとして、米国・メキシコ・カナダ協定(USMCA)が定める「事業所特定の迅速な労働問題対応メカニズム(RRM)」に基づき、メキシコ政府に事実確認を要請したPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)

RRMは、事業所単位で労働権侵害の有無を判定する手続きで、違反が認められれば、USMCAによる特恵措置の停止といった罰則が適用される。RRMの手続きは、USMCA加盟国政府が独自に発動できるが、労働組合などの第三者機関が加盟国政府に労働権侵害を提訴することも可能だ。今回は、メキシコ全国鉱夫・冶金・鉄鋼労働組合(SNTMMSSRM)に加えて、米国最大の労組である全米労働総同盟・産業別組合(AFL-CIO)および全米鉄鋼労働組合(USW)から提訴を受けたとしている。当該鉱山においてグルポ・メヒコが、ストライキが継続中であるにもかかわらず稼働を再開したことや、SNTMMSSRMが当該鉱山を代表する労組であるにもかかわらず一部の労働者と団体交渉を行ったことなどが理由として挙げられている

事実確認の要請を受けたメキシコ政府はUSMCAに基づき、調査を行うか否かを10日以内に返答しなければならず、調査を行う場合には45日以内に完了する必要がある。また、今回のUSTRによる確認要請をもって、米国は問題となっているメキシコの事業所からの製品輸入について、両国間で労働権侵害が解消されたことに合意するまで、最終的な税関での精算を留保できる。実際、キャサリン・タイUSTR代表は財務長官に対し、当該鉱山からの製品輸入にこの措置を適用するよう指示PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)した。

USMCA締約国の米国、メキシコ、カナダは、域内からの強制労働の排除を重視している。RRM手続きは2023年に入ってから今回で既に6件目、USMCA発効からは合計で11件目となるが(添付資料参照)、メキシコ政府はこれまでRRM手続きが開始されると積極的に協力し、比較的短期間で問題を解決してきた。直近では6月12日、自動車分野以外で初の衣服分野で発動されており、タイ代表は同案件を指摘した上で、「本日の発動と合わせて、RRMがすべての産業分野の労働者を保護すべく機能することを示している」との声明を出している。タイ代表は前日に行った講演でも、通商政策において労働者保護を重視する点を強調しており(関連ブラック ジャック web)、今後もRRMはその実現のための有効なツールとして産業分野を問わず積極的に活用されるとみられる。

(磯部真一)

(米国、メキシコ、カナダ)

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