アジア中心に成長への楽観論を維持、OECDの世界経済見通し
(世界)
国際経済課
2023年06月08日
OECDは6月7日、「世界経済見通し」を発表。2023年の世界の経済成長率(実質GDP伸び率)を2.7%、2024年を2.9%と予測した(添付資料表参照)。前回(2023年3月)の見通し(OECDの経済見通しを上方改定、ブラック)と比較すると、2023年は0.1ポイントの上方修正、2024年は据え置きとなった。
2023年の上方修正については、エネルギー価格の低下を指摘しつつも、主に新興国・地域の市場の成長に加えて、経済再開後の中国の回復が経済に良い弾みをもたらしたことによるものと説明した。OECDは、2024年にかけて世界の経済成長の大部分がアジア地域に由来する見通しを示している。OECDのマティアス・コーマン事務局長は、今回の見通しが前回からほとんど変わっていないとした上で、「今回の回復予測は、いまや現実のものになりつつあるやや楽観的な見通しを維持するもの」と説明した。
2023年の主要国の経済成長率をみると、北米地域は、金利引き上げに伴う住宅投資の急減や企業の設備投資の弱さが出つつも、米国(1.6%)は好調な前年からの持ち越し効果、カナダ(1.4%)は人口増加や堅調な労働市場に支えられる見通し。ユーロ圏(0.9%)では、エネルギー価格を含む消費者物価の低下が寄与し、主要国で小幅な上方修正を見込む。中国(5.4%)は、ゼロコロナ政策の転換により、対面サービス需要が解放され、消費意欲を引き上げる結果、不動産市場の停滞が緩和されるとしている。
インフレ率は、食料やサービスの価格は急上昇を続けるものの、直近2~3カ月のエネルギー価格の低下を反映し、OECD平均で2022年の9.4%から2023年に6.6%、2024年に4.3%と低下していくと予測した。サービスについては、多くの国で新型コロナウイルス以前の水準に需要が戻っていると指摘した。
今後のリスク要因としては、ウクライナ紛争の進展の不確実性と同紛争の世界的な影響を挙げ、また、2023年の欧州の暖冬のようなエネルギー需要の低下に寄与した好条件が続く保証がないことを指摘した。さらに、インフレの長期化を追加的な下押しリスクとしたほか、高金利の影響が広がりつつあり、緊縮的な金融政策が債務国を中心に財政リスクとなる懸念を示した。
(藪恭兵)
(世界)
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