英政府、産業用エネルギー源のクリーン化に向けた資金提供を発表
(英国)
ロンドン発
2023年06月30日
英国政府は、産業用のエネルギー源の化石燃料からクリーンな代替燃料への転換支援に向け、企業への資金提供を発表した。資金提供の規模は8,290万ポンド(約151億7,070万円、1ポンド=約183円)。英国の低炭素技術の拡大に向けて創設された総額10億ポンドの「ネットゼロ・イノベーション・ポートフォリオ」を通じて実施される。
6月28日にロンドンで開催された「気候変動イノベーション・フォーラム」で、グラハム・スチュアート・エネルギー安全保障・ネットゼロ省国務相が発表した。
資金提供の内訳と対象は次のとおり。
- 産業用燃料転換コンペティション(5,250万ポンド):製紙工場やガラスメーカーなどの企業による、水素やバイオ燃料など化石燃料に代わる低炭素燃料の開発プロジェクト13件
- 水素・炭素回収・貯留型バイオマス発電(BECCS)イノベーションプログラム(フェーズ2、2,120万ポンド):バイオマスなどの廃棄物を炭素回収しながら水素に変換するプロジェクト5件
- 炭素回収・有効活用・貯留(CCUS)イノベーション2.0コンペティション(920万ポンド):二酸化炭素(CO2)を肥料生産に再利用するなどのプロジェクト11件
資金提供を受ける主な企業として、ケロッグは約330万ポンドの資金提供を受け、マンチェスターのシリアル製造工場の燃料としての水素使用を計画。プログレッシブ・エナジーと共同で、製造工程の熱源を天然ガスから水素へ転換する。スコットランド最古のウイスキーメーカーの1つのアナンデール蒸留所は360万ポンドの資金提供を受け、蓄熱技術の導入を予定。エディンバラ大学発のベンチャー企業エクサジー3と共同で、特殊なセラミック製レンガに熱エネルギーを蓄える実証を行う。その熱はウイスキー製造工程に利用し、再生可能エネルギーと組み合わせることで蒸留所の製造プロセスの完全な脱炭素化を実現し、加えて、送電ネットワークの柔軟性にも貢献するとされる。
また、今回の発表と合わせて、水素を用いた産業の燃料転換の実証を支援する「水素アクセラレータープログラム」の9件のフィージビリティー・スタディー・レポートが公開された。
(菅野真)
(英国)
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