公的機関絡みの不正取得資産差し押さえを法制度化
(ベネズエラ)
ボゴタ発
2023年06月07日
ベネズエラで、不正に取得された資産を国家が押収する「所有権消滅組織法(LOED)」が4月28日に公布された(2023年4月28日付特別官報6745号)。120日後に施行される。2023年3月に多数の公的機関幹部らが汚職により摘発されたことを受け、対策強化に乗り出したものだ。ただ、同法の公布以降、政治利用が警戒されるなどさまざまな反応が見られている。
2023年3月中旬以降、暗号資産監督局(Sunacript)、国営石油公社のPDVSA、ガイアナ開発公社(CVG)など、公的機関や国営公社の幹部、判事、市長など60人以上が汚職により次々と逮捕されるスキャンダルが発生している。ニコラス・マドゥーロ政権内の実力者だったタレク・アイサミ石油相も、事件の余波から辞任に追い込まれた。この度公布された所有権消滅組織法(LOED)は、遡及(そきゅう)して資産差し押さえが可能となっており、政府は既にビル、高級アパート、邸宅、土地、高級車、重機、飛行機など1万件の資産を差し押さえたとしている。
本件は、政権自ら内部の腐敗を暴き、処罰したものであるため、2024年に予定されている大統領選挙に向けた与党内の権力闘争が関係すると見る向きもある。他方で、政府派、反政府派にかかわらず、脅しの手段として利用される可能性も懸念されている。また、前チャベス政権以降に行われた民間資産の事実上の接収を思い起こさせるものであり、一部で始まっている商業投資ブーム(関連ブラック ジャック トランプ)に水を差すとの声もある。
現在、反政府派は、大統領選に向けた候補者一本化のための予備選挙を2023年10月22日に実施するための各プロセスを進めている(2023年3月20日記事参照)。7月5日以降に各党の候補が確定し、8月には選挙キャンペーンが開始される。なお2023年に入り、インフレによる消費の低迷など経済が減速する傾向が見え始めており、汚職に絡み商業施設建設プロジェクトの停止などが多発した場合、経済低迷に拍車をかけるといった警戒感も大きい。
(マガリ・ヨネクラ、豊田哲也)
(ベネズエラ)
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