マレーシア、パーム油などの輸入規制で欧州に代表団派遣、持続可能性の取り組み訴える

(マレーシア、インドネシア、EU)

クアラルンプール発

2023年06月02日

マレーシア、インドネシアと、両国が主導するパーム油生産国評議会(CPOPC、注1)は5月30、31日に代表団をベルギーのブリュッセルへ派遣し、欧州委員会や欧州議会の関係者と協議した。EUが採用するパーム油輸入規制について、国内の小規模事業者への悪影響を訴えつつ、両国の持続可能性に対する取り組みを説明、規制緩和への理解を求めた。

ミッション派遣で一定の進展、生産国の懸念伝達

CPOPCは6月1日に出した声明外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますで「直ちに具体的成果が出るとは期待しないが、EUが両国の要望を認識し、将来的な相互協力への道筋を作る重要性について、強いメッセージが出せた」と表明した。31日に会見したマレーシアのファディラ・ユソフ副首相兼プランテーション・商品相もEU側から肯定的な反応があったとし、協議に一定の進展があったことを評価した。代表団は同大臣とインドネシアのアイルランガ・ハルタルト経済担当調整相が率い、パーム油委員会(MPOB)やパーム油評議会(MPOC)、サラワク州の幹部らも同行した。

EUはかねて、パーム油生産やアブラヤシ栽培を自然破壊の要因とみて、輸入を規制する動きを強めてきた。2021年11月には森林破壊防止のためのデューディリジェンス義務化に関する規則案を発表し(2022年12月14日記事参照)、5月にEU理事会(閣僚理事会)で採択外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした(官報掲載前の最終テキストPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます))。同規則は、2020年12月31日以降に森林破壊をして開発した農地産のパーム油やゴム、木材、大豆などや、これら関連製品の輸入を禁じており、EUへ輸出する場合には上記に該当しない産品と証明する必要がある。

他方、マレーシアとインドネシアはパーム油輸出で世界シェアの約88%を占め(金額ベース、2021年)、マレーシアにとっても、EUは中国、フィリピン、トルコに次ぐ第4位の仕向け先だ。規則は、生産国の小規模事業者をサプライチェーンから締め出す不公正な措置として、生産国側は批判を強めてきた。実務面では、トレーサビリティーに関する要件や最終需要家へのデータ提供がコスト増につながるとの指摘もあった。この規則への対応として、プランテーションの協力も得つつ、トレーサビリティー確保の文書化を進める在マレーシア企業の例も報じられている。

持続可能性に関する取り組みへの理解、引き続き求める

ファディラ氏は、中小事業者の利益を保護するため、今後もEUとの議論を継続するとした。特に、ベンチマーク制度で「高リスク国」に分類されることの悪影響が大きいため、持続可能な生産に関する生産国の取り組みにEU側の理解を得たい考えだ。例えば、マレーシアでは泥炭地のアブラヤシ栽培や森林保護区への転作を禁止している。また「マレーシアの持続可能なパーム油(MSPO)」(注2)は、持続可能性確保への取り組みを保証するものと付け加え、自国産農産物のイメージ改善に向けて対抗策を引き続き講じると訴えた。

(注1)2015年11月に発足。2023年5月の第11回会議からホンジュラスが正式参加。コロンビア、ガーナ、パプアニューギニアがオブザーバー国。

(注2)2013年に導入したマレーシア独自の制度で、環境に配慮して生産されたパーム油を認証するもの。2022年3月に基準を厳格化する大幅改定を行った。

(吾郷伊都子)

(マレーシア、インドネシア、EU)

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