欧州委、ウクライナの2023年GDP成長率を0.6%と予測

(EU、ウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナ)

ブリュッセル発

2023年05月23日

欧州委員会は5月15日、春季経済予測(欧州委、2023年のEUのGDP成長率予測を上方修正、ブラック)の一環として初めて、2022年にEU加盟候補国となったウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナの経済見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(注)。ウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナの2023年の実質GDP成長率を、それぞれ0.6%、2.8%、1.5%と見通した(添付資料表参照)。

ロシアによるウクライナ侵攻を背景に、欧州委はウクライナの2022年の個人消費は約30%減、投資は約35%減となり、全体のGDP成長率はマイナス29.1%だったと予測した。ウクライナは2022年末から2023年初頭にかけ、ロシアに電力インフラの約半分を破壊されるなど深刻な被害を受けた。それでも、重要なエネルギーインフラの回復が予想以上に早く、各国から輸出支援や財政支援も受けることから、2023年は経済の安定化が見込まれるとした。2024年後半に徐々に復興条件が整ってくると仮定すると、2024年のGDP成長率は4.0%まで緩やかに回復するとも予測した。他方、見通しは極めて不確実で、戦局に大きく左右される点を強調した。

ウクライナの隣国モルドバは、ロシアのウクライナ侵攻、干ばつ、エネルギー危機により深刻な影響を受けた2022年から穏やかに回復し、2023年のGDP成長率は2.8%になると予測した。2024年はエネルギー価格の下落を背景に貿易条件が改善し、消費が伸びることを予想。個人消費のほか、堅調な政府消費支出や投資の緩やかな回復が経済成長を牽引するとして、成長率を4.1%と見込んだ。

ボスニア・ヘルツェゴビナは2021年、新型コロナウイルス感染拡大後にGDP成長率7.4%を記録したものの、2022年は国際情勢の悪化とインフレの影響を受け成長が鈍化し、成長率が3.9%に低下した。今後は外需が緩やかに改善すると予想される一方、内需は可処分所得の伸び悩みと継続的な政情不安の影響を受けるとして、2023年の成長率は1.5%、2024年は2.3%と見込んだ。

(注)ウクライナとモルドバは2022年6月に、ボスニア・ヘルツェゴビナは2022年12月にEU加盟候補国となった(EU首脳、ブラック ジャック)。なおウクライナについて本経済予測の対象は、当局の管理下にある地域とし、不法に「併合」されたクリミア自治共和国およびセバストポリ市と、ドネツク州とルハンスク州の非政府支配地域の一部は除いた。またモルドバについては、トランスニストリア地方を除く地域を対象とした。

(大中登紀子)

(EU、ウクライナ、モルドバ、ボスニア・ヘルツェゴビナ)

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