中国国有企業が、コロンボ港の大規模物流拠点を建設・運営へ

(スリランカ、中国)

コロンボ発

2023年05月29日

中国の国有企業である招商局集団(China Merchants Group)傘下の招商局港口(China Merchants Port Holdings)は4月21日、コロンボ港において大型商業・物流複合施設の建設・運営を目的とした官民連携による合弁企業を設立した。出資比率は、招商局港口が70%、スリランカ港湾局が15%、アクセス・エンジニアリング社が15%となる。今回のプロジェクトは、50年間の建設・運営後にスリランカ側に譲渡するBOT方式(注)で進められる。

今回の建設費用は3億9,200万ドルと推定され、2022年春から続く経済危機以降、スリランカで最大の投資となる。同社によると、本プロジェクトを通じてスリランカへの累積投資額は20億ドル以上に達し、スリランカで最大の外資系企業になるという。契約締結の式典には、招商局集団会長の缪建民(ミャオ・ジェンミン)氏も出席した。

コロンボ国際コンテナターミナル(CICT)社によると、今回の開発では、コロンボ港を南アジア最大の物流拠点と位置付け、53万平方メートルの保管場所を有する8階建ての倉庫を建設予定だという。2023年後半に建設を開始し、2025年末までの完成を目指しているとされる。本拠点は現在、中国国有企業である中国交通建設の出資の下で建設中の、金融拠点の集積を目指すコロンボ・ポートシティに隣接するとともに、バンダラナイケ国際空港につながる高架道路との接続も計画されている。

そのほか、コンテナが集積するコンテナ・フレイト・ステーションの建設や、複数国からの小口貨物を混載するマルチ・カントリー・コンソリデーション(MCC)のサービスの提供なども予定されている。さらに同社は、フリーポートの特性を活用した通関・事務手続きの軽減や、進出企業に対する税制優遇なども訴求していく構えだ。スリランカは、南アジアの国際物流拠点への成長を目指しているものの、積み替え貨物の受け入れ能力の向上や、MCC物流体制の構築などが、かねて課題となっている(2018年6月7日付地域・分析レポート参照)。

「一帯一路」構想を掲げる中国は、ハンバントタ港やマッタラ国際空港、中央高速道路やノロッチョライ火力発電所などのインフラ分野でスリランカに進出している。これら案件の建設に関連し、スリランカが多額の資金調達をせざるを得なくなったことが、経済危機の一因になったとされている()。スリランカはハンバントタ港の建設において、中国からの融資への返済が滞ったことで、CMG社に11億2,000万ドル、99年間のリース契約で引き渡している。現在は、ハンバントタ国際港会社の株式のうち、85%を招商局港口社が、15%をスリランカ港湾局が所有している。

(注)Build,Operate,Transfer(建設・運営・譲渡)の略。公共セクターが民間セクターに対し、運営に必要となるインフラを 整備させ、そのインフラの運営権を一定期間付与する手法。運営期間中の新たな整備は、民間セクターが実施する。

(大井裕貴)

(スリランカ、中国)

ビジネス短信 ae2afc2321df9a05