米小売り大手の決算、長引くインフレで消費者は必需品などの購入を重視
(米国)
ニューヨーク発
2023年05月24日
米国小売り大手のウォルマートが5月18日に発表した2023年第1四半期(2~4月)の決算によると、総利益は前年同期比7.6%増の1,523億100万ドルとなり、金融調査会社リフィニティブのコンセンサス予想(1,487億6,000万ドル、注1)を上回った。また、2024年通期(2023年2月~2024年1月)の売上高見通しは前年比約3.5%増と、従来の2.5~3.0%増から引き上げられた。高インフレが続く中、食品など必需品の購入を優先する消費傾向が根強く、同社が強みとする低価格戦略が節約志向の高い消費者を引き付けているとみられる。同社のジョン・レイニー最高財務責任者(CFO)は決算発表時の電話会議で、「今四半期は、一般商品の売り上げが1桁台半ばの減少率で推移したが、食品部門で高所得世帯を含むシェア拡大が続いており、食品・消耗品の売り上げは2桁台前半の伸び率を記録した」と述べた。
一方、小売り大手のターゲットが5月17日に発表した2023年第1四半期(2~4月)決算では、同社の純利益は前年同期比0.6%増の253億2,200万ドルと小幅な伸びにとどまった。好調な食品や美容製品、家庭用必需品などの販売が、裁量的消費財の継続的な需要不振を補った。2024年通期(注2)の見通しについては、既存店の売上高が1桁台前半の増加から減少まで幅広い範囲を想定しているが、これは事前の市場予想と一致している。同社は窃盗や小売店を対象とする組織的な犯罪被害に直面しており、これらの影響を受け、前年から5億ドル以上の減収の可能性があるとしている。
ホームセンター最大手ホームデポが5月16日に発表した2023年第1四半期(2~4月)の決算によると、同社の総利益は前年同期比4.2%減の372億5,700万ドルと、リフィニティブの予想(382億8,000万ドル)を下回り、2四半期連続で減少した。CNBCによると、同社は第1四半期の決算について過去20年以上の中で最大の収益不振としており、2024年通期(注3)の見通しについても、売上高の予想を従来(横ばい)から下方修正し2.0~5.0%減としている。同社のリチャード・マクフェイル最高財務責任者(CFO)は「新型コロナ禍で住宅改修に対する需要が旺盛だったことを受け、2023年度の年間売上高は3年前と比べて約470億ドル増加している。しかし、住宅ローン金利の上昇やサービスへの支出シフトが、予想された消費の減退に拍車をかけている」と述べた(CNBC5月16日)。
発表された小売企業の決算について、金融機関UBSの小売りアナリスト、マイケル・ラッサー氏は、「非常に明確なパターン」で、消費者が購入する商品をより見極めるようになっていることを示していると述べた。「個人的には、この傾向は当分続くだろうと見ている。消費の方向性に大きく影響を与えるのは、労働市場で何が起こるかだ」と指摘している(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月18日)。
(注1)リフィニティブが、各証券アナリストが独自に調査・分析した業績予想の平均値を算出したもの。
(注2)ターゲットの各事業年度は、翌年の1月31日に最も近い土曜日が最終日となっている。このため、2023年度は2023年1月29日~2024年2月3日。
(注3)ホームデポの各事業年度は、翌年の1月31日に最も近い日曜日が最終日となっている。このため、2023年度は2023年1月30日~2024年1月28日。
(樫葉さくら)
(米国)
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