EUの2022年の鉄鋼需要は前回予測より大幅減、2023年も厳しい見通し

(EU)

ブリュッセル発

2023年05月08日

欧州鉄鋼連盟(EUROFER)は5月3日、四半期ごとに発表している2023~2024年EU経済および鉄鋼市場見通しPDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)を発表した(プレスリリース外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。2022年のEUの鉄鋼需要は前年比7.2%減となり、EUROFERの前回(2月)の予測(4.6%減)より大幅な減少となった。EUの鉄鋼需要は、新型コロナウイルス感染拡大の影響が最も大きかった2020年に比べ、2021年は16.3%増と回復したが、2022年に入りウクライナ情勢やエネルギー危機により再び暗転。特に第4四半期(10~12月)は前年同期比19.3%減の2,960万トンと、新型コロナ危機関連の規制に伴い製鉄所の操業を停止せざるを得なかった2020年第2四半期(4~6月)に次ぐ記録的な低水準となった。域内消費向け生産量も2022年は前年比8.0%減と、前年の11.9%増と対照的に鉄鋼需要の低迷を反映した数字となった。

2022年のEUへの輸入量(鋼片も含む)は前年比6.6%減だったが、EUROFERは下半期の鉄鋼需要の減少に伴うもので、輸入品の市場シェアは依然として記録的に高い水準にあるとした。2022年はウクライナ情勢により輸入相手国が様変わりした。ロシアとウクライナは、上半期は完成品の輸入相手国の上位5カ国に入っていたが(2022年8月31日記事参照)、EUROFERが2023年2月に発表した2022年1~11月の統計では、それぞれ前年同期比68%減、49%減となった。第4四半期の上位5カ国・地域は、トルコ、韓国、中国、台湾、日本となり、特に日本は前年同期比47%増と著しく伸びた。

2023年の鉄鋼需要については、引き続きウクライナ情勢、高止まりしているエネルギー価格やインフレといった下振れ要因があるのに加え、景気が悪化するとの経済見通しに基づき前年比1.6%減と予測した。一方、2024年については、工業生産や鉄鋼需要は回復傾向に向かう見通しから、これまでの予測を上方修正し5.4%増とした。

鉄鋼ユーザー業界についても2023年は厳しい予測を示す

EUROFERは、鉄鋼ユーザー業界について、2022年の生産高は前年比3.1%増と、前回予測(2.1%増)を上回り、「2022年第4四半期までは予想外に強靭(きょうじん)だった」と評価した。しかし、第4四半期は著しく悪化したと分析。第3四半期(7~9月)まではウクライナ情勢の影響は限定的だったが、夏以降、欧州の天然ガス価格の指標であるオランダTTF(Title Transfer Facility)が大きく下がったにもかかわらず、エネルギー価格は依然として高水準にあり、EUの景気が悪化するとの予測も影響したとした。

EUROFERは「EU産業界にとって最も厳しい時期は過ぎたようだ」とするものの、今後数四半期は経済的不確実性があるとして、2023年のユーザー業界の生産高は、部門間で状況は異なるが、全体としては前年比0.3%増とほぼ横ばいになり、その後、2024年は2.3%増と回復軌道に乗るとした。

(滝澤祥子)

(EU)

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