連邦財政赤字、4月末時点で年間想定額を超過

(ロシア)

欧州課

2023年05月31日

ロシア財務省の連邦財政収支統計(速報値。519日発表)によると、14月の連邦政府の財政赤字は、2023年予算で想定された29,253億ルーブル(約49,730億円、1ルーブル=約1.7円)を上回る34,239億ルーブルに達したことが分かった。

財政赤字の要因は、歳入に重要な地位を占める石油・ガス収入の伸び悩みにある(添付資料表参照)。ロシア財務省によると、202314月の歳入は非石油・ガス収入が前年同期比4.8%増の55,000億ルーブルとなったものの、石油・ガス収入が同52%減の22,820億ルーブルと低調だった。財務省で公開している2011年以降のデータでは、新型コロナウイルス流行で世界的に燃料需要が低迷した2020年を除き、石油・ガス収入は毎年歳入の3分の1以上を占め、ロシア政府にとって最も重要な財源となっている。

財務省は、石油・ガス収入減少の要因を原油価格の下落と天然ガス輸出減と分析しながらも、「石油・ガス収入は安定しつつあり、年間目標の8兆ルーブルは達成可能」としている。その一方、世界的な原油価格の下落傾向や、202212月に導入されたロシア産原油に対する価格上限設定措置(2022126日記事参照)もあり、石油・ガス収入が順調に推移するかは予断を許さないとの見方もある。金融・経済ジャーナリストのイーゴリ・ジュリキン氏は、20234月時点でもロシア産原油価格は北海原油に比べ3割安(注)で取引されていると指摘する(ティンコフ・ジャーナル2023523日)。

ロシアには、財政赤字を補填(ほてん)することができる政府系基金(国民福祉基金)があるため、財政赤字を一定程度補填することは可能だ。他方、今後の原油価格や政府支出の推移次第では、2024年末までに国民福祉基金が枯渇するとの声もある(コメルサント202327日)。財務省の主張する規律に沿った財政支出への疑問もある(NGS・ルー2023516日)。赤字の補填手段として国債発行や国有企業からの配当の予算繰り入れなども考えられているが、政府の財政は厳しい状況が続くとみられる。

(注)ロシア産原油(ウラル原油)の価格は、2022年のウクライナ侵攻以降、欧州向けを中心に需要が激減したことから、価格が大きく下落した。侵攻前は北海原油とほぼ同額だったが、一時は1バレル当たり最大40ドル程度の価格差が生じた。

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