バイデン米大統領、マッカーシー下院議長と債務上限問題について4回目の会談、1兆ドル以上の歳出削減策を提示
(米国)
ニューヨーク発
2023年05月23日
米国のジョー・バイデン大統領は5月22日、連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長(共和党、カリフォルニア州)と、債務上限問題への対応に関する4回目の協議を行った。前回協議(2023年5月17日記事参照)の後、両者は合意に対して前向きなコメントを発していたが、スタッフ間の協議で交渉が難航し、共和党側が途中退席したと伝わるなど再び議論が暗礁に乗り上げていた(ブルームバーグ5月20日)。この状況に鑑み、広島で開催されたG7広島サミット(主要国首脳会議)からの帰路(21日)、バイデン大統領はマッカーシー議長と急きょ電話会談を行い、22日に再協議が実現した(ロイター5月21日)。
バイデン大統領は5月21日、自身のツイッターで1兆ドル以上の歳出削減策を提示したと表明しており、協議はこの削減策を軸に進んだものとみられる。結局、合意には至らなかったが、マッカーシー議長は「これまでの協議の中で一番良い雰囲気だった」と語るなど(ブルームバーグ5月22日)、協議が前進していることをにじませた。バイデン大統領も会談後、「デフォルト(債務不履行)はわれわれの協議のテーブルから(選択肢として)外れている」とする声明を発表し、一定の歩み寄りがあったことを示唆した。なお、歳出削減について、少なくとも今後2年間は裁量的支出に何らかの上限を設けることで大筋合意しているとみられる(「ニューヨーク・タイムズ」紙電子版5月22日)。
なお、ジャネット・イエレン財務長官は同日、連邦議会指導部に宛てた最新の書簡で、足元の税収などを反映しても、債務不履行に陥る「Xデー」はやはり最短で6月1日になる可能性が高いと述べた。またマッカーシー議長は、法案が作成されて上下両院を通過するまでに数日を要するため、今週中(5月27日まで)に合意する必要があると述べている(ロイター5月22日)。一方、両党ともに党内に抵抗勢力を抱えており、共和党では党内強硬派がマッカーシー議長に即座の協議中止を迫っているとされる(ABCニュース5月18日)。民主党でも、バーニー・サンダース上院議員(バーモント州)ら左派の上院議員が、即刻交渉を打ち切り、合衆国憲法の修正第14条「公的債務の有効性は問われてはならない」とする文言の解釈を用いて、議会承認なしに債務上限を引き上げるべきとする書簡をバイデン大統領に送っている。仮に協議が合意に至った場合でも、上下両院に合意に否定的な勢力が一定程度存在するとみられ、議会を通過するまで気が抜けない状況が続きそうだ。
(宮野慶太)
(米国)
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