ハンガリー議会、EU基金の拠出金一時停止解除に向け司法改革法案を採択

(ハンガリー、EU)

ブダペスト発

2023年05月18日

ハンガリー議会は53日、司法改革のための基本法(憲法)など一連の関連法を一括で改正する法案を採択した。司法改革は、EUの結束基金や「復興レジリエンス・ファシリティー(RRF)」からの資金拠出に必要とされている(2022122日記事参照)。

この法案の原案は、3月にバルガ・ユディット司法相が議会に提出したもの。424日に欧州委員会とハンガリーの間で司法改革パッケージに関して技術的合意に至り、その合意に基づいて原案が大幅に修正され、最終的に議会で採択した。

この改革は、司法の独立性を強化するための4つの柱で構成されている。具体的には、(1)裁判所の中央管理・監督機関である全国裁判所評議会の独立性確保、(2)最高裁判所と憲法裁判所の政治的影響からの保護、(3)裁判官がEU司法裁判所(CJEU)に先行判決(注)を求める制限をなくす改革などだ。

欧州委は20221222日、ハンガリーの20212027年の結束政策に関するパートナーシップ協定を採択しており、同政策に基づいて総額220億ユーロの資金提供を行うことで合意している。ただし、加盟国による結束政策実施と資金提供は、EU基本権憲章の順守が前提条件となっている。欧州委は、ハンガリーが司法の独立性の強化について復興計画に含めていることから、司法改革の措置を講じた時点で、結束政策の実施条件も満たされたと見なすとしている。そのため、ハンガリー政府は、司法の独立を確保する改革を実行することで、一時停止されている結束基金とRRFの資金を受け取るための扉を開きたい狙いだ。しかし、RRFの資金を受け取るには、さらに27項目の措置「スーパーマイルストーン」を全て実行する必要があるため、ハンガリー政府は引き続き改革を進めることになる。

報道によると、EUは、ハンガリーの司法改革案がRRFの資金を拠出するのに十分かどうかまだ判断していない。この件を担当するナブラチッチ・ティボル地域開発担当相は、ATVニューステレビのインタビュー(420日)で、EU資金に関する技術的合意が2023年夏までに欧州委とハンガリー間で成立し、同年下半期に拠出金を受け取ることになると予想していると述べている。

成立した改正法は 61日に発効する。

(注)EU加盟国の裁判所が自国の裁判の前提として、EU法の解釈について疑問点が生じ、判断が必要と認めるときは、当該問題点についてCJEUに意見を聞くことができる制度。

(バラジ・ラウラ)

(ハンガリー、EU)

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