「カルチャー・パス」が若者の書籍購入を大きく後押し

(フランス)

パリ発

2023年05月10日

フランス政府は4月28日、若者の文化活動を支援する「カルチャー・パス」により、2021年の導入以来1,450万冊の書籍が購入されたと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

カルチャー・パスは、若者の文化へのアクセスを容易にし、芸術的活動を促進することを目的として、エマニュエル・マクロン大統領が2021年5月に導入した制度。カルチャー・パスのアプリケーションをダウンロードしアカウントを作成することで、18歳時に、2年間の有効期限で300ユーロが支給される。書籍の予約、コンサート・劇・美術館・映画館のチケット予約、絵画やダンス・音楽のレッスン、画材や楽器の購入、音楽や映画のストリーミングのサブスクリプションなどに使用できる。

文化関係者とユーザーとの出会いを促進しているため、電子書籍やビデオゲームなどのデジタル商品に対する利用は100ユーロまでに制限されており、商品の配送はできず店舗に取りに行く必要がある。同措置は2022年から年少者にも拡大され、15歳時に20ユーロ、16歳時と17歳時に30ユーロの支給となった。

文化全般への支援策だが、カルチャー・パスの恩恵を最も受けたのは書籍で、特に日本の漫画の販売が急激に伸びた。2021年11月25日時点でカルチャー・パスによる販売のトップ12が、ワンピース、鬼滅の刃、進撃の巨人、僕のヒーローアカデミア、呪術廻戦、ベルセルク、ナルトなど日本の漫画だった。2023年のカルチャー・パスの予算の審議の際には、野党の国民連合の議員から「書籍の54%の販売が(日本の)漫画」だとして、(日本の)漫画をカルチャー・パスの対象から除外するよう修正案が出されたが、却下された。2023年のカルチャー・パスの予算は、前年比950万ユーロ増の2億850万ユーロとなっている。

カルチャー・パスが4月に発表した調査によると、2023年第1四半期における18歳以上の若者の漫画の購入は34%で、前年から10ポイント減少した。その理由として、小説やノンフィクションなど、より多様なジャンルへ関心の対象が広がっているためとした。カルチャー・パスにより新たに発見した本のジャンル(18歳~20歳を対象、複数回答可)は、1位が自己啓発(33%)、2位が小説(28%)、3位がサイエンス・フィクション(24%)、4位が哲学(22%)だった。

一方、4月21~23日にはパリで本の見本市「フェスティバル・デュ・リーブル・ドゥ・パリ2023」が開催された。主催者によると、入場者は前年比13%増で10万人を超え、その半数近くが25歳以下であり、売り上げは32%増だった。若者向けのTikTokによるコミュニケーションとカルチャー・パスが貢献したとしている。カルチャー・パスが若者の書籍購入を後押ししている。

(奥山直子)

(フランス)

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