フランス政府、製造業のグリーン化投資に補助金・税額控除を導入へ

(フランス)

パリ発

2023年04月11日

フランスのブリュノ・ル・メール経済・財務・産業およびデジタル主権相は4月3日、製造業のグリーン化に関する第1回会合を開き、1月に設置した5つの作業部会がまとめた提言外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますを公表した。政府は、29項目から成る同提言の内容を踏まえてグリーン製造業法案を策定し、6月に閣議決定する。

政府は法の施行により、(1)フランスを、グリーン化された製造業とヒートポンプ、脱炭素水素(注1)、ソーラーパネル、バッテリー、半導体など脱炭素化された産業の主権確保に必要な技術において第一人者とすること、(2)フランスにおける温室効果ガス排出量の19%を占める製造業の脱炭素化を促進することの、2つの目標達成を目指す。

5つの作業部会のうち、製造業のグリーン化促進に向けた税制改正に関する第1作業部会は、グリーン化のカギとなる技術〔バッテリー、水電解装置、ヒートポンプ、小型モジュール炉、太陽光・風力発電、二酸化炭素(CO2)回収・有効利用・貯留(CCUS)、半導体、電力系統向け部品〕の国内生産と、工場の脱炭素化投資に対する補助金または税額控除措置の導入を提言した。工場の脱炭素化促進については、米国のインフレ削減法に対抗するため、国家投資計画「フランス2030」に関連して追加措置を導入することも提言された。

また、こうした支援措置を新たな財政負担なしで実施するために「フランス2030」の予算配分を見直すとともに、ガソリンや軽油などの購入に係るエネルギー製品内国消費税(TICPE)の軽減税率の引き上げや、CO2排出量が多い車両に対する環境課徴金の強化、社用自動車税の引き上げ、研究税額控除制度(CIR)の一部見直しなどで財源を確保するよう提案した。

また、工場開設、荒地の再開発、土地の利用に関する第2作業部会は、工場設置までの期間を短縮するため、工業用地の開発業者が将来のプロジェクトを見越して行政手続きの一部を事前に行うことを認めるなど、ターンキー方式の工場用地増設に向けた措置を提言した。

第3作業部会は、環境配慮型製品の国内生産・調達・購入を後押しするため、国内製造業の環境卓越性の基準となる「トリプルE」(注2)ラベルを制定し、同ラベルの認証を公共調達の入札における選定基準などに組み込むこと、従業員500人以上の企業に義務付けられている「温室効果ガス排出量報告書(BEGES)」と(環境)移行計画の策定と公表を、特定の企業支援の適用条件に付して透明性を強化することなどを提言した。

その他、政府が管理する貯蓄型金融商品を通じた脱炭素化向け資金供給の拡充や、製造業のニーズに合わせた人材育成の強化、などの方針も提言された。

(注1)製造工程・利用過程でCO2を排出しない水素のこと〔水素の普及に関する政府発表資料PDFファイル(外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)(2023年2月)〕。

(注2)「Excellence Environnementale Europeenne」(欧州環境卓越性)の略。

(山崎あき)

(フランス)

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