バイデン米政権、対ロ制裁の迂回を理由に外国の事業体・個人に制裁
(米国、ロシア、ウクライナ)
ニューヨーク発
2023年04月13日
米国のバイデン政権は4月12日、ウクライナ侵攻に関連する対ロシア制裁の迂回(うかい)を理由に、20以上の国・行政区に関連のある120以上の事業体・個人を「特別指定国民(SDN)」に指定したと公表した。また、複数の外国事業体は、商務省が管轄する輸出管理規則(EAR)上のエンティティー・リスト(EL)に追加された。
SDN指定は、国務省と財務省がそれぞれの権限で行った。今回指定されたのは、2022年にSDN指定を受けたロシアの富豪のアリシェル・ウスマノフ氏が関係する制裁迂回ネットワークや、ロシアの民間軍事企業ワグネルが関連する事業体に衛星画像を提供した中国企業、ハンガリーのブダペストに本部を置くロシア主導の国際投資銀行(IIB)などが含まれている。SDNには、在米資産の凍結や米国人(注1)との資金・物品・サービスの取引禁止という制裁が科される(注2)。財務省のブライアン・ネルソン次官はプレスリリースで「クレムリンがウクライナへの戦争行為を理由に発動された多国間制裁と輸出規制を回避しようとする中、米国と同盟・友好国は引き続き、戦場でプーチンを支援する迂回スキームを破壊し続けるだろう」と述べ、今後も迂回行為に対する執行に注力する姿勢を示している。バイデン政権は3月、産業界向けに対ロ制裁順守に関する勧告を公表している()。
商務省産業安全保障局(BIS)は、ロシアに対する輸出管理の迂回行為などを理由に、28の外国事業体の計32拠点をELに追加した。中国に12拠点、ロシアに10拠点、アラブ首長国連邦(UAE)とウズベキスタンにそれぞれ2拠点あるほか、アルメニア、マルタ、シンガポール、スペイン、シリア、トルコにも1拠点ずつ存在する。正式には4月17日付の官報で公示となるが、EL掲載の効果は4月12日から有効となっている。ELに今回追加した事業体の大半は「ロシアまたはベラルーシの軍事エンドユーザー」として指定された。EARの対象製品がこれら事業体に輸出などされる場合、たとえそれらが米国外で生産された製品でも、米国製のソフトウエア・技術を用いて生産されている場合は、商務省への事前許可申請が必要になる、いわゆる外国直接製品(FDP)ルールが適用される。
なお、バイデン政権の対ロシア・ベラルーシ制裁については添付資料参照。
(注1)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(注2)また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。SDNに今回指定した企業などの詳細は、財務省のウェブサイトで確認できる。ウクライナ情勢に関する財務省による制裁の全容は、同省の「ロシア関連制裁」のポータルサイトを参照。制裁対象に指定した個人・企業などについては、同省外国資産管理局(OFAC)のデータベースでCountry欄のRussiaを選択し、Searchをクリックすることで確認可能。
(磯部真一)
(米国、ロシア、ウクライナ)
ビジネス短信 b9939660c09f2405