政府が渇水対策に本腰、インフラ整備を迅速化
(イタリア)
ミラノ発
2023年04月24日
イタリアの渇水が深刻化している。4月13日の全国用水および土地管理・保護協会(ANBI)の発表によると、イタリア最長の川であるポー川の流量が毎秒338.4立方メートル(m3/s)を記録し、過去の4月の最低流量を更新した。海水流入の閾(しきい)値の450m3/sを100m3/s以上下回り、農業などに与える影響が懸念されている。また、同値は危機的状況にあった2022年の6月4日に記録されている数値で、40日以上早まっていることにも危機感が高まっている。
ミラノがあるロンバルディア州の貯水量も、過去の平均と比較すると58.4%減少しており、2022年と比べても12.6%不足している。雪不足も平均値と比較して68.8%減で、過去の最低値より約10%低く、2022年より20%下回る状況だ。
渇水については、2月ごろから報道などで前年を上回る危険性が指摘され続けてきた。
政府は4月6日の閣僚会議で、渇水の緊急事態に関わる政令を承認。4月14日に官報が発表された。この政令では、気候変動に対応する水処理システムの強化を基本とし、以下の項目などを目的とし、インフラ整備の手続き簡素化や工事の円滑化を推進する。
- 水資源の無駄の削減。
- 「復興・回復のための国家計画(PNRR)」に準ずる水処理施設の建設の計画・実現にかかる手続きの簡素化。
- 貯水池の容量の増強
- 農業における排水の再利用。
- 淡水化処理施設の建設の大幅な簡素化。
また、政府は渇水に関する監督機関を創設する。インフラ・交通相のほか、環境・エネルギー安全保障相、農業・食料主権・林業相など複数の閣僚で構成し、政令が発効してから30日以内に、緊急性の高い工事や介入策の必要性などを検証する。また、臨時担当委員を指名し、インフラ整備の遅延などがあった場合に介入できる権限を与える。
ジョルジャ・メローニ首相は同政令について「イタリアは20年以上、渇水に関わる問題があったが、政府として取り組んでこなかった。非常事態となる前に構造的な対策を打つ」とコメントした(4月7日付メローニ首相ツイッター)。
ジルベルト・ピケット・フラティン環境・エネルギー安全保障相は、淡水化処理施設の建設はイタリアではまだ普及しておらず、新しい取り組みだと評価した(4月7日付環境・エネルギー安全保障省プレスリリース)。
イタリアの中小企業・職人連盟や全国農業従事者同盟なども、政府の決定に賛意を示している。
(平川容子)
(イタリア)
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