米環境保護庁が自動車排ガスの新規制案を発表、2032年までに2026年比56%の削減を要求
(米国)
ニューヨーク発
2023年04月21日
米国環境保護庁(EPA)は4月12日、乗用車と小型トラックを含むライトビークル(LDV)と中型車(MDV、注1)の2027~2032年モデルを対象とした、温室効果ガス(GHG)と大気汚染物質の排出基準に関する規制案「2027年モデル以降のLDVとMDVに対する複数の汚染物質排出基準」を発表した。バイデン政権は、自動車メーカーに過去最も厳しい排出基準を課すことで、GHG削減と電気自動車(EV)の普及を加速させたい意向だ。
LDVの二酸化炭素(CO2)の排出基準は、最終年に当たる2032年モデルで、業界平均1マイル(約1.6キロ)当たり82グラム(82gpm)と設定された(添付資料表参照)。2022年2月に発効した現行規制の最終年に当たる2026年モデル(186gpm、注2)と比べ、56%の削減が求められる(関連ブラック ジャック ディーラー)。また、MDVのCO2排出基準は、2032年モデルで275gpmと定められ、2026年モデルと比べ44%の削減となる。EPAは、バッテリー式EV(BEV)の技術革新や、インフレ削減法に基づく経済的支援、自動車メーカーによるゼロエミッション車(ZEV)の生産計画などに鑑み、より厳しい基準値の設定が可能と判断した。これらの新基準が満たされた場合、2032年までにEV比率がLDVで67%、MDVで46%になると予測されている。
CO2排出量の算出に当たり、LDVは各車両のフットプリント(注3)、MDVは最大積載量、牽引能力、四輪駆動の有無を組み合わせた「ワークファクター」を基準とする。これらはいずれも、現行規制を引き継いだ。また、各自動車メーカーが全車両の平均値で基準を達成できる「平均化」、前年以前の基準超過分をクレジットとして貯蓄し翌年以降の未達分に補填できる「貯蓄」、他社とクレジットを売買できる「取引」(ABT、注4)も、引き続き認められる。
一方、技術改良などにより認められていた特典が、一部撤廃された。「エアコン(AC)クレジット」について、ACの稼働で失われるエネルギー効率の改善と、冷媒の漏えいなどによるGHGの排出を改善する技術に認められるクレジットのうち、前者はLDVのガソリンエンジン車(ICE)にのみ適用され、後者はLDV、MDVともに廃止されることになった。また、BEV、プラグインハイブリッド車(PHEV)、燃料電池車(FCV)の販売台数の積み増しである「乗数インセンティブ」(注5)の適用は、LDVで2024年モデル、MDVで2026年モデルを最後に終了する。そのほか、新技術に認められる「オフサイクルクレジット」の適用は、2030年モデルが最後となる。
EPAは官報掲載後60日間、連邦政府ホームページでパブリックコメントを募集する(ドケット番号:EPA-HQ-OAR-2022-0829)。公聴会は5月9日と10日に開催される予定で、参加希望者は5月2日までにメール(EPA-LDhearings@epa.gov)などで申し込み可能。
(注1)EPAが定めるクラス2bおよびクラス3の大型車両で、主に総車両重量定格(GVWR)が8,501~1万4,000ポンドの大型ピックアップおよびバンが含まれる。当該車両には、これまで大型車の規制が適用されていた。
(注2)2027年モデル以降の基準値と比較するため、現行規制の算出条件に修正を加えた調整後の値。現行規制の2026年モデルに対する基準値(161gpm)とは異なる。
(注3)車両のホイールベース(前輪の中心から後輪の中心までの長さ)にトレッド幅(左右の車輪間の距離)を掛けたもの。車輪が地面と接する点で囲まれた面積と同じ。
(注4)Averaging, Banking, and Tradingの略。
(注5)現行規制では、2023年モデルと2024年モデルの販売台数を計算する際に1台当たり、EVとFCVは1.5、PHEVは1.3の乗数を適用することが認められている。
(大原典子)
(米国)
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