ハイデルベルク・マテリアルズ、ドイツ国内にCO2回収・利用施設を建設
(ドイツ)
ミュンヘン発
2023年04月25日
ドイツのセメント大手ハイデルベルク・マテリアルズ(注)は4月12日、ドイツ・米国資本のガス大手のリンデと合弁会社を設立し、ドイツ国内の工場に二酸化炭素(CO2)回収・利用(CCU)施設を建設すると発表した。
建設地は、フランクフルトから南東に約90キロ離れたバイエルン州レンクフルトにあるハイデルベルク・マテリアルズのセメント工場。セメントの製造工程で排出されるCO2をアミン吸収法による技術で分離回収し、加工する。回収したCO2の大半は、リンデが飲料・食品産業、化学産業に販売する。新施設は2025年に操業開始予定で、年間約7万トンのCO2の回収を見込む。
ハイデルベルク・マテリアルズは、セメントおよび関連素材1トン当たりのCO2の純排出量を、2030年までに400キログラムまでに削減することを目指す。これは、1990年の750キログラムから47%の削減となる。
同社はCO2削減に向け、今回のドイツでのプロジェクト以外にも、世界各地でCO2回収・貯留(CCS)やCCUのプロジェクトを実施、計画している。ノルウェー・ブレビックにあるセメント工場では、2021年からCCS施設を建設しており、2024年から同工場で排出するCO2の約半分に相当する年間40万トンを回収・貯留する予定。また、CO2の利用と貯留を組み合わせたCCUS施設は、2026年にカナダ、2028年に英国、ベルギー、ブルガリア、2030年に米国での操業開始が計画されている。
ドイツ政府もCCS、CCUのプロジェクトを後押しへ
ドイツ連邦経済・気候保護省は今回のプロジェクトに対し、同省の「産業の脱炭素化支援プログラム」により約1,500万ユーロを助成する。なお、ドイツでは2012年にCO2貯蔵法(KSpG)が施行され、CCSの実施は研究・試験目的の貯蔵に限り認められてきた。連邦政府は、同法が定める4年に1度の評価報告書を2022年12月に閣議決定し、同報告書は気候中立達成のため、CCSに加えCCUの活用にも言及するとともに、CO2のパイプライン輸送やこれに必要なインフラ整備などに関して法律で定めるよう提案した。これを受け、連邦政府は2023年中に「炭素マネジメント戦略」を発表する予定だ。連邦政府は同戦略の策定のため、2023年3月には、CCSやCCUに関するステークホルダー会議を始動させている。
(注)2022年9月にハイデルベルク・セメントからハイデルベルク・マテリアルズにブランド名を変更することを発表した。
(高塚一)
(ドイツ)
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