ディープテック展示会「ハロー・トゥモロー・グローバルサミット2023」開催
(フランス)
パリ発
2023年03月27日
フランスのパリでディープテック(注1)の展示会「ハロー・トゥモロー・グローバルサミット2023」が3月9~10日に開催された。革新的技術を有するスタートアップや企業などが一堂に会する世界最大規模のネットワーキング機会の創出を目的に、2011年創業のフランス企業ハロー・トゥモローが毎年開催しているイベントで、今回が8回目となる。ピッチコンテスト「グローバルチャンジ」やスタートアップによるブース出展のほか、最先端技術トレンドに関するカンファレンスも開催され、世界から3,000人を超える来場者を迎えた。
日本から登壇・出展したスタートアップは全3社。そのうち、東京大学大学院と東京医科歯科大学大学院発で、中枢神経疾患における脳への薬物送達技術を有するブレイゾン・セラピューティクスは、ハロー・トゥモロー・アジアパシフィックが2022年10月にシンガポールで開催したアジア大会「アジアパシフィックサミット」での選抜を勝ち抜いていた。3月9日朝、立ち見の出るほどにぎわったピッチ会場で、医療用バイオテック・医薬品分野のファイナリストとしてグローバルチャンジに登壇した。
スタートアップ展示ブースには、カーボン新素材グラフェンメソスポンジ(GMS)を開発・製造する東北大学発の3DC、藻類およびその成分の研究開発・生産、販売を手掛ける東京大学発のアルガルバイオが出展し、来場者の注目を集めた。
カンファレンスでは、当イベントの戦略パートナーのボストンコンサルティングが、スタートアップデータベースであるディールルームの2021・2022年のデータと独自の分析に基づき、世界のベンチャーキャピタル投資の19%をディープテックが占めると指摘。さらに、ディープテック投資のうち26%が、電気自動車(EV)、エネルギー、アグリ・フード、カーボンキャプチャー(二酸化炭素の回収)の4つのサステナビリティ領域に集中している点を、注目すべき傾向として強調した。
ブース出展をしていた欧州イノベーション会議(EIC)関係者によれば、「ホライズン・ヨーロッパ」(注2)の下、EICは予算規模101億ユーロで、スタートアップ・中小企業の研究開発から概念実証、技術移転、資金調達、スケールアップまでを支援する、イノベーションの創出支援プログラムを実施している。助成対象は、EU加盟国およびホライズン・ヨーロッパの準加盟国(アイスランド、イスラエルなど)のスタートアップ・中小企業だ。日本のスタートアップ・中小企業も、EICのプログラムの支援対象企業と連携できる可能性がある。
(注1)ハロー・トゥモローの定義によると、「科学・応用工学に根差した先端技術を用いた革新的アプローチであり、既存技術を凌駕(りょうが)がする重要な進展をもたらし、世界課題の解決に資するもの」。分野としては、ヘルスケア、エネルギー・環境、先進コンピューティング、食料・農業、産業用バイオテック・新素材、インダストリアル4.0、製造・建設、モビリティー・航空宇宙が含まれる。
(注2)2021~2027年のEUの研究開発支援枠組み(総額955億ユーロ規模)。
(伊藤生子、井上尚貴)
(フランス)
ビジネス短信 e6cb24449a60ec3d