2023年通年の米小売売上高は前年比4~6%増の見通し、成長率は前年より鈍化
(米国)
ニューヨーク発
2023年03月30日
全米小売業協会(NRF)は3月29日、2023年の米国の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)の見通しを発表し、前年比4~6%増の5兆1,300億~5兆2,300億ドルになると予測した。2022年通年の年間成長率(7%)より鈍化する見込みだが、新型コロナウイルス流行以前の平均成長率(3.6%)を上回るとしている。
業種別にみると、ネット販売を含む無店舗小売りが前年比10~12%増の1兆4,100億~1兆4,300億ドルに増加すると見込んでいる。多くの消費者は引き続きオンラインショッピングを利用する一方で、その成長の多くはマルチチャネル販売によるものとしている。実店舗についても、その役割は進化し続けており、これまで消費者は買い物するために店舗を訪れていたが、近年は店舗での受け取りを含む配送業務全般を統括する重要な役割も担っているとしている。NRFによると、実店舗は依然として消費者にとって主要な購買拠点で、小売業全体の売上総額の約70%は依然として店舗で行われているという。
今回の発表について、NRFのマシュー・シェイ会長兼最高経営責任者(CEO)は「今後1年間の成長が緩やかになることが予想されるが、小売業の売上高が歴史的な水準に安定するにつれて、プラスの状態を維持することができると考える。小売業者は、素晴らしいショッピング体験とともに、さまざまな商品を手頃な価格で販売することで、現在の経済環境下で消費者にサービスを提供する準備が整っている」と述べた。また、NRFのチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンズ氏は「銀行業界の混乱の影響を完全に知るにはまだ早過ぎるが、2023年第1四半期(1~3月)の個人消費はかなり好調だ」「消費者が支出を維持すると予想される一方で、年内はよりソフトで不均一なペースになる」との予想を示した。
NRFは、直近の労働市場は堅調に推移しているものの、経済活動の鈍化や信用状況の悪化に伴い、今後数カ月間は雇用の伸びが鈍化するとしている。小売業界では、ウォルマートをはじめ、百貨店のノードストロームやニーマン・マーカスなど、既に人員削減に踏み切った企業もある。再就職支援会社チャレンジャー・グレイ・クリスマスによると、2023年年初から2月までの小売業の人員削減は1万7,456人に達しており、2022年の同時期の761人を大幅に上回っている。全業種をみても、直近2月の人員削減は7万7,770人と、2009年(18万6,350人)以来の高水準となっている。米国の景気減速を受けて、今後も幅広い分野で人員削減計画が続くことが懸念される。
(樫葉さくら)
(米国)
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