連邦政府、水素インフラ整備プロ21 トランプクトの助成案件を発表

(ベルギー)

ブリュッセル発

2023年03月30日

ベルギー連邦政府は3月24日、2022年に発表した新しい水素戦略()に基づき、水素インフラの整備につながるプロ21 トランプクトの第1回公募結果を発表した(プレスリリース、オランダ語外部サイトへ、新しいウィンドウで開きます)。36の企業や学術機関、コンソーシアムの中から、グリーン水素(注)の製造・輸送・利用に焦点を当てた6つのプロ21 トランプクトを選定し、総額3,000万ユーロを助成する。2023年後半には2回目の公募を予定しており、助成規模は2,000万ユーロとなる見込み。政府の試算によると、水素関連産業はベルギーで11億ユーロの付加価値を生み出し、2030年までに年間180万トンの二酸化炭素(CO2)の排出削減に貢献するとともに、1万人の雇用を創出するという。

今回選定されたプロ21 トランプクト(計画)は以下のとおり。

  1. 「NextH2Gen」計画:ベカルト(鋼線加工)、コルホイト・グループ(小売り)、デメ(海洋土木・建設)、ジョンコックリル(エンジニアリング)、imec(ナノテクノロジー研究)、Vito(クリーンテック研究)が参加し、ギガワット級の水素をコスト効率よく持続的に製造することを目指す。imecとVitoが開発する関連技術を活用し、ジョンコックリルやべカルトが水電解装置への実装やスケールアップを担う。デメは当該技術を活用し、風力・太陽光由来のグリーン水素や、合成燃料(e-fuel)など派生製品の製造を目指す。2026年を見込む同技術の市場投入に向けて、経済分析やビジネスモデルの開発を行う。
  2. 「GrHyne」計画:ジョンコックリルは、水素エコシステムの構築に向けて、電解槽の高効率化に関する研究開発を行うとともに、2030年までに電解槽の年間生産能力を1ギガワット(GW)まで引き上げ、生産コストの低減を図る。
  3. 「COMFORTHYBEL」計画:べカルトは、ガスパイプラインでの高圧水素輸送による鋼材の疲労防止のため、スチールコードで補強された柔軟なパイプラインの研究を行う。
  4. 「Storm power to gas」計画:素材大手ユミコアは、同社工場敷地内に0.5メガワット(MW)の容量の電解槽を設置、地域で生産される風力と太陽光エネルギーを活用し、実際の工業プロセスに即した環境で、グリーン水素の製造を実証する。
  5. 「HOPE」計画:グリーン水素製造を手掛けるフランスのライフ(Lhyfe)は、グリーン水素の製造能力10MWの設備を北海洋上に設置し、2025年までの稼働を目指す。洋上で製造したグリーン水素は、パイプラインで陸上の最終顧客まで輸送することを目指しており、技術的・経済的な実現可能性を実証する。
  6. 「H2PY Seraing」計画:ルミナス〔フランス電力(EDF)のベルギー子会社〕、AGCガラス・ヨーロッパ、マテリアノバ(マテリアル研究)、フラクシーズ(インフラ)が参加。プラズマ熱分解技術を利用して、メタンからCO2を排出しない水素(ターコイズ水素)を製造する実証実験を行う。2026年までに産業規模での実用化を目指しており、主にはベルギー東部スランのガス火力発電所での活用を見込む。

(注)水素はその製造方法によって(1)化石燃料を燃焼させたガスを改質することで製造する「グレー水素」、(2)グレー水素製造工程で排出された二酸化炭素(CO2)を回収し貯留または利用(CCS、CCUS)することでCO2排出を抑える「ブルー水素」、(3)再生可能エネルギーを利用して水を電気分解することで製造し、製造工程でCO2を発生させない「グリーン水素」などに分かれる。

(大中登紀子)

(ベルギー)

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