連邦政府、所得税の控除額引き上げなどの税制改革案を発表
(ベルギー)
ブリュッセル発
2023年03月10日
ベルギー連邦政府のビンセント・バン・ペテゲム副首相兼財務相は3月2日、労働者の負担を軽減し、起業を促す税制への移行を目指して、政府内での協議に基づく、抜本的な税制改革の第1案を発表(プレスリリース、フランス語)した。ベルギーでは、市民や専門家らを交えた議論を経て、2022年7月に税制改革の方針が取りまとめられ、長期的に課題に取り組むことを念頭に、抜本的な改革を行う方向性が確認されていた。政府は今回の税制改革の第1段階で、2024年1月1日からの施行を目指し、法案成立に取り組む。
また、第2段階として、労働所得に対する累進税率の低減と、資産に対する定率課税を組み合わせた所得税改革や、年金、医療、労働市場の改革による所得の再分配などが検討されているが、次回総選挙後の組閣交渉における協議事項として詳細は発表されていない。ベルギーでは、連邦議会と地域議会の選挙が2024年5月もしくは6月に予定されている。
今回、第1案として提案された内容は以下のとおり。
- 所得税の基礎控除額を1万3,500ユーロ(現行:1万160ユーロ)に引き上げる。
- 累進課税制度における、税率45%の課税対象額の上限を年収6万ユーロ(現行:4万6,440ユーロ)まで引き上げる。
- 世帯構成によって差が生じない、より公正な個人所得税制度を目指し、今後20年で、既婚者・法的同居人に対する税制上の優遇を撤廃する。
- 企業の人材確保の観点から、ストックオプション制度を簡素化するとともに、付与対象者に対する税制優遇を検討する。
- 野菜や果物、医薬品、おむつなどの衛生製品、公共交通に対する付加価値税(VAT)を0%に削減する。
- 電力や天然ガス、水道、家庭用暖房器具に対する6%の付加価値税の軽減税率を維持する。エネルギー価格高騰を受けて、住宅用の電力や天然ガスについては現在、一時的に6%に低減されている(2022年3月22日記事参照)。
- 化石燃料への補助金を段階的に撤廃する。
年金制度に関しては、法定の基礎年金に加えて支給される付加年金について、より税制優遇を受けられる制度に見直すとしている。社用車の利用に関する税制については、変更は提案されなかった。また、企業投資に対する税額控除では、エネルギー効率化や脱炭素などの持続可能な投資への優遇を強化する一方で、イノベーション促進を目的とする税控除では、対象となる知的財産の定義を明確化する。
(大中登紀子)
(ベルギー)
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