エネルギー会社EnBW、化学メーカー・エボニックへの洋上風力電力供給を増加
(ドイツ)
ミュンヘン発
2023年02月24日
ドイツ南西部バーデン・ビュルテンベルク州に本社があるエネルギー会社EnBWは2月2日、スペシャルティーケミカルのエボニックに、洋上風力発電所からの電力供給量をさらに増やすと発表した。
両社が2022年11月に締結した契約では、2026年から15年間、EnBWが建設予定の北海の洋上風力発電施設「He Dreiht」から年間100メガワット(MW)の電力を供給することになっていた。今回新たに締結した契約で、供給電力を50MW拡大して年間150MWとする。新契約による追加分の供給期間も2026年から15年間。
両社の契約は「コーポレートPPA(Corporate Power Purchase Agreement)」と呼ばれるもの。エネルギー会社などと民間企業が直接、長期間の電力購入契約を結ぶ契約だ。気候中立を目指す企業には再生可能エネルギー由来の電力の確保が必要で、その結果、コーポレートPPAによる契約事例がドイツでも増えている。EnBWによると、2022年に大企業や中堅企業からPPAに関する照会が急増したという。
エボニックは今回の契約を通じ、2026年から欧州で必要な電力量の3分の1以上を調達できることになる。エボニックによると、現時点では、全世界での外部調達電力の27%が再生可能エネルギー由来。EnBWとのPPAを通じ、その割合が約5割になる。また、同社は今回の契約を通じ、スコープ2(注)の二酸化炭素(CO2)排出量を年間15万トン削減できる。同社はスコープ1と2のCO2排出量を、現状の650万トンから2030年までに490万トンまで削減する目標を掲げる。
EnBWは2022年11月、ドイツ鉄鋼メーカーのザルツギッター(Salzgitter)子会社ともPPAを締結、「He Dreiht」から15年間、年間50MWの電力を供給する。グリーン鉄鋼生産に力を入れるザルツギッター(2022年2月14日記事、3月25日記事、11月7日記事参照)は外部電力調達に占める再生可能エネルギーの割合を、2025年に5割以上、2030年に100%とする目標を有する。また、EnBWは2021年12月、フランクフルト空港の運営会社フラポート(Fraport)ともPPAを締結している(2021年12月21日記事参照)。
洋上風力発電施設「He Dreiht」は、北海に15MW級の風車が約60基設置される欧州最大級の洋上風力発電プロジェクト。年間発電量は900MWで、2025年末に商用運転を開始する予定。最終的な建設判断は2023年第1四半期(1~3月)中に行われる見込み。
(注)温室効果ガス(GHG)排出量の算定、報告の基準の1つ。スコープ1では、事業者自らによるGHGの直接排出(燃料の燃焼、工業プロセス)を対象にする。スコープ2は、他社から供給された電気、熱・蒸気の使用に伴う間接排出。スコープ3では、スコープ1とスコープ2以外の間接排出(事業活動に関連する他社の排出)にまで踏み込む。
(高塚一)
(ドイツ)
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