バイデン米大統領がマッカーシー下院議長と会談、債務上限引き上げ協議の継続に合意
(米国)
ニューヨーク発
2023年02月02日
米国のジョー・バイデン大統領は2月1日、連邦議会下院のケビン・マッカーシー議長(共和、カリフォルニア州)とホワイトハウスで、懸案となっている債務上限問題への対応に関する協議を行った。具体的な進展はなかったもようだが、ホワイトハウスの発表によると、両者は協議の継続に合意した。
連邦政府の国債の発行上限額は、議会による歳出関連法によって定められており、これを超えた資金調達を政府が行うことはできない。現在の上限額は31兆4,000億ドルだが、発行残高は既にこの上限に達しているため、財務省は公務員退職・障害基金(CSRDF)などへの投資を一時停止するなどで手元資金を工面している(2023年1月16日記事、1月20日記事参照)。一方で、下院多数派の共和党はバイデン政権に歳出削減を求め、債務上限対応を留保していることから、下院共和党のリーダーのマッカーシー議長との会談が今回行われた。
報道によると、バイデン大統領はマッカーシー議長に、3月9日に発表予定とされる2024年度予算案を提示してデフォルトを回避する確約を求めるとともに、共和党予算案の提示・説明を求めたとされているが(ロイター1月31日)、会談の詳細は公表されていない。会談を終え、マッカーシー議長は「共通点は見いだせる」と語ったが、具体的な成果への言及はなかった(ロイター2月1日)。
無党派シンクタンクの「責任ある連邦予算委員会」によると、2032年までに財政収支を均衡させるには14兆6,000億ドルの赤字削減が必要と試算しており、歳入を増やすことなくこの削減を達成するには、全ての支出を現状から約26%削減する必要があるとしている。共和党による歳出削減案では、防衛関係費と社会保障関係費を削減の対象から除外するとされているが、これらを除外する場合には、他の支出は現状から85%削減する必要があるとしている。報道では、難航する協議を見こして、9月末までの資金需要に対応するだけ小幅に債務上限を引き上げる案や(ブルームバーグ1月26日)、政府が1兆ドルの高額コインを発行し、中央銀行である連邦準備制度理事会(FRB)がこれを預けて政府に資金を支払うことで、国債を発行せずに政府が資金を調達するといった案も取り沙汰されている(「ガーディアン」1月31日)。いずれにしろ、今回の議会による債務上限引き上げへの対応状況は、債務上限引き上げ後に民間格付け会社が米国債を格下げした2011年よりも危機的との声が大きく、引き続きその動向に注目が集まる。
(宮野慶太)
(米国)
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