政府が「簡易版」自動車の生産規則の期限を5月末まで延長
(ロシア)
欧州ロシアCIS課
2023年02月08日
ロシア政府は1月31日、エアバッグやアンチロック・ブレーキ・システム(ABS)などが搭載されず、排ガス規制も受けない車両の生産を認める規則の期限延長を決めた。2022年5月12日付政府決定第855号「特定の車両に対する必須要件の適用ならびに適合性評価の実施に関する規則の承認について」の期限が2023年1月31日から5月31日に変更された。
政府が安全基準や環境基準の緩い「簡易版」自動車の国内生産を認めるのは、ウクライナ侵攻後に発生した物流の混乱などにより、国内メーカーが部品調達の問題に直面したことがきっかけだ(ウクライナ侵攻後、一気に国内乗用車市場暗転(ブラック)。産業商務省は同日付のプレスリリースで、「ロシアの自動車メーカーから多数の要望を受けて延長を決めた」と今回の決定の背景に言及している。
国内の自動車メーカーは、今回の規則の延長決定自体は歓迎する姿勢を示している。その一方で、排ガス規制に従いつつ、今回の規則延長をあくまでも現状の操業の維持が難しくなった際のバックアップとの位置づけにとどめるところもある。地場トラック大手のカマズは現在も排ガス規制ユーロ5(注)を満たすモデルの生産を継続している。同社のオレグ・アファナシエフ広報部長は「もし(ユーロ5を満たすために必要な)組み立て部品を供給するパートナーに経済制裁が科されても、今回の決定があれば生産を停止せずに済む」と話している(「イズベスチヤ」2月1日)。
一方で、簡易版モデルについては、特に安全基準に対して不安視する声も多い。一部の専門家は「一部の消費者は簡易版モデルを買うくらいなら、代わりに中古車や並行輸入品を選ぶだろう」とみている(「コメルサント」2月1日)。産業商務省はこれ以上の期間延長は予定しておらず(「ノーボスチ通信」1月31日)、「6月1日以降に向けて、自動車生産の要件を厳格化する草案を準備する予定だ」と述べている(産業商務省発表1月31日)。
(注)2009年からEU域内で導入された排ガス規制で、2005年導入のユーロ4と比べて大幅な排出量の削減を求めている。
【欧州ロシアCIS課】
(ロシア)
ビジネス短信 8a936d9d726e59a9