ニアショアリングの影響で工業不動産レンタル価格が高騰
(メキシコ)
メキシコ発
2023年02月03日
メキシコでの2022年の工業用不動産レンタル価格(1平方メートル当たり)が全国平均(主要21都市)で月額5ドルを超え、直近8年間で最も高額となった。工業用不動産のデータプラットフォームを運営するダートスによると、用地レンタル価格に関する初回の見積り提示額(月額)で、チワワ州シウダ・フアレスが前年比33%増の1平方メートル6.57ドル、タマウリパス州レイノサが21%増の同5.06ドル、ヌエボ・レオン州モンテレイが17%増の同5.27ドルとなった。2022年はメキシコで生産拠点を探している外国企業の強い需要により工業用不動産市場が伸びた。その要因として、生産拠点を消費地の近隣国に移転するニアショアリングの影響が挙げられ、メキシコ主要都市で実質的に不動産の空きスペースがない状態となっており、工業用不動産市場の価格高騰を招いている(「エル・エコノミスタ」紙1月30日)。
特に、メキシコ北東部に位置し、米国テキサス州にほど近いヌエボ・レオン州の州都モンテレイ近郊は、屋根付き工業団地の取引が2022年で最も多く行われた地域となった。工業分野の不動産を専門とするコンサルティング会社シティウス・エージーの分析によると、2022年にモンテレイでは179万3,756平方メートルの工業不動産が販売され、2位のメキシコ市と近郊(130万9,012平方メートル)を上回ったとしている。シティウス・エージーのマネジングディレクターのミゲル・カバソス氏は「この結果は、ニアショアリングによる影響の一部で、モンテレイがさまざまな分野の企業にとって魅力的な投資先となっている。モンテレイにはメキシコ企業数と同程度の外国企業数が存在し、それが外国企業にとっての安心感につながっている。また、毎年多数の工学系の卒業生を輩出しているので、熟練した労働力を確保できることが魅力」と語った(「レフォルマ」紙1月30日)。
2022年11月~2023年1月半ばに11億ドル以上の製造投資
クレディ・スイスのレポートでは、2022年11月以降で少なくとも5件、総額11億ドルの工場建設に関する発表があり、その大半が自動車関連だったが、電子産業も増加傾向にあるとした。また、民間工業団地協会(AMPIP)会長によると、AMPIPはカナダ、中国、韓国、日本の企業75~100社を誘致したと述べている。AMPIPの推計では、少なくとも工業用不動産のうち97%が占有されており、特に重要な北部では空きスペースが1%未満となっている。ニアショアリングの効果によって最も投資を集める地域はモンテレイ近郊で、全体の50%を占め、次いでコアウイラ州サルティ-ジョ近郊11%、ユカタン州メリダ8%、サンルイスポトシ6%となっている(「エル・エコノミスタ」紙1月23日)。2023年もニアショアリングの効果は続くと予想されるため、主要地域での工業用不動産の不足や価格の高騰が引き続き発生する可能性がある。
(阿部眞弘)
(メキシコ)
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