バイデン米大統領の一般教書演説、ねじれ議会に超党派協力を呼びかけ
(米国、ロシア、ウクライナ、中国)
ニューヨーク発
2023年02月08日
米国のジョー・バイデン大統領は2月7日、就任後2回目となる一般教書演説を行った。2022年11月の中間選挙を経て、共和党が下院の多数派となった中、内政・外交の諸課題について党派を超えた協力を呼びかけた。
バイデン大統領は、正式に表明していないが、再選を目指して2024年11月の大統領選挙に立候補する意向を固めつつあるとの憶測が出ている。支持率は4割台前半で推移し、ワシントン・ポスト紙とABCニュースが実施した直近の世論調査(注)によると、62%が「大統領は多くのことを成し遂げていない」と厳しい評価を下している。そのような状況下で、政権前半の2年間の成果と今後の目標を有権者に訴える場として演説に臨んだ。
今回は1時間超の演説の大半を内政問題に割いた。冒頭では、下院議長に就任した共和党のケビン・マッカーシー議員(カリフォルニア州)に祝辞を述べたほか、第117議会(2021年1月3日~2023年1月3日)において超党派で300以上の法案を成立させたことなどに言及し、共和党との協力姿勢を前面に出した。その後、新型コロナ禍からの経済再興や、成立させたインフラ投資雇用法、CHIPSおよび科学法、インフレ削減法などの成果を強調した。また、外国企業に影響を与え得る新たな措置として、連邦資金が提供されるインフラ計画において、使用される建設資材は全て米国製であるべきとするバイ・アメリカン政策の強化を提案した。バイ・アメリカンの強化は、就任1年目の施政方針演説、1年前の一般教書演説()でも言及されており、民主党の支持基盤である労働組合を意識したものとみられる。バイデン大統領はこのほか、支持基盤の中間層を意識し、富裕層や大企業に公平な負担を課すと強調した(経済に関する演説内容は関連ブラック ジャック web)。経済政策以外に、治安対策の強化、国境警備と移民制度の改革、女性の人工中絶権の確保、ヘルスケア、民主主義の強化などに言及したが、多くが共和党と対立する課題で、一部の共和党議員から野次が飛ぶ場面もみられた。
1年前の一般教書演説では、直前に起きたロシアによるウクライナ侵攻を冒頭に取り上げたが、今回は外交政策について終盤にわずかな時間を割くにとどまった。1年前に続き、ロシアによるウクライナ侵攻に言及し、世界への試練としてウクライナ支援を継続するとのメッセージを発した。米中関係については、競争は追求するが衝突は望まないとしつつ、国務長官の訪中延期につながった気球問題を示唆しながら、中国が米国の主権を脅かすなら国家を守るために行動を起こすと強調した(ブリンケン米国務長官、トランプ)。バイデン大統領の呼びかけに超党派で成果を出せるか、新たな勢力図で本格始動する政権・議会の動向に注目が集まる。
(注)1月27日~2月1日に、米国内の成人1,003人を対象に行った世論調査()。
(磯部真一)
(米国、ロシア、ウクライナ、中国)
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