トルコ南部で大地震、工業集積地でも被害
(トルコ)
イスタンブール発
2023年02月08日
トルコ南部で2月6日、マグニチュード7.8規模の地震が2度にわたって発生した。その後も余震が続いており、被害が拡大するおそれもある。隣接するシリア北部でも多くの被害が報告されており、既に両国合わせて7,000人以上が犠牲になったと報道されている(2月7日時点)。加えて、電気、ガス、医療といったライフラインも被害を受けており、厳冬による二次被害も懸念されている。なお、日本政府は直ちに国際緊急援助隊・救助チームを派遣した。
被災地域は、震源地のカフラマンマラシュ県、ガズィアンテプ県を中心にオスマニイェ県、ハタイ県、アダナ県、キリス県、アドゥヤマン県、マラトヤ県、シャンルウルファ県、ディヤルバクル県などトルコ南部と南東部にかけた広範囲に及ぶ。特にカフラマンマラシュ県とハタイ県の被害が深刻という。
この地域は、ガズィアンテプ県を中心にトルコ南東部工業地域の一角を占め、繊維から鉄鋼まで多くの労働集約型工業の集積地となっている。また、アダナ県に隣接するメルスィン港、ハタイ県のイスケンデルン港を介して、中東と欧州を結ぶ物流網にもなっている。加えて、アダナ県ジェイハンは、アゼルバイジャンからトルコまでを結ぶバクー・トビリシ・ジェイハン石油パイプライン(BTC)や、イラクとトルコを結ぶキルクーク・ユムルタルック石油パイプラインの出口でもあり、経済的にも重要な地域でもある。
震災の影響は、インフラへも被害をもたらしている。ハタイ空港が損傷、イスケンデルン港のコンテナも倒壊、火災も発生した。トルコの国営石油ガス・パイプライン輸送会社ボタシュ(BOTAŞ)は、パイプラインに被害はないとしながらも、大事を取ってBTC石油パイプラインのジェイハン・ターミナルで石油輸送を一時停止した(報道によると現在は再開)。また、メルスィン県でアックユ原子力発電所を建設しているロシアの国営ロスアトムは、発電所への被害は見られないと発表した。なお、オスマニイェ県には、日系企業の工場もあり、今後の影響が懸念されている。
(中島敏博)
(トルコ)
ビジネス短信 4d3ed610e67a08d9