VW、EVシフトに向けリスキリングと即戦力採用を同時に推進
(ドイツ)
ミュンヘン発
2023年02月10日
ドイツ自動車大手のフォルクスワーゲン(VW)のドイツ東部ザクセン州の拠点は1月18日、「未来eモビリティ・キャンパス(Future e-Mobility Campus)」を開始した。電気自動車(EV)シフトに向けて従業員のリスキリング(注1)などを促す。
運営主体はVWザクセン拠点のVW教育機関(Volkswagen Bildungsinstitut)で、1990年設立の歴史ある機関だ。今回、「未来eモビリティ・キャンパス」として、ザクセン州内の同機関の施設を拡張するとともに、初期職業訓練、継続教育訓練向けにEV関連のカリキュラムを刷新した。新キャンパスのための投資額は約1,500万ユーロ。
新設テーマとしては、高電圧技術、電動パワートレイン、自動運転、自動化とデジタル化、最新の溶接工程。他分野を含め、VW教育機関では、年間最大1,000人の初期職業訓練生、8,000人の継続教育訓練受講者を受け入れられる体制となる。新コース実施に当たっても、ザクセン州内の大学、公共職業安定所、商工会議所などと連携する。対象はVWグループの初期職業訓練生または社員が中心だが、同州内の自動車部品メーカーなどからも受け入れる。
新キャンパス近くのVWツビッカウ工場は、2022年1月からEV専用工場に生まれ変わった。2022年には、「ID.3」や「ID.4」などを中心に21万8,000台のEVを生産した。これまでも従業員のリスキリングを進め、2018~2020年に同工場の約8,000人の従業員がVW教育機関の提供するEV生産に関する訓練を受講した。VWザクセン拠点の従業員数は約1万1,400人で、平均年齢は約44歳、女性比率は11%(2022年10月発表)。
IT・ソフトウエア技術者は即戦力を採用
VWグループは一方で、即戦力となる人材の獲得も進める。同グループは2023年2月1日、IT・ソフトウエア分野の技術者2,800人以上の採用に向け積極的にリクルートを進めると発表した。具体的には、同グループのソフトウエア部門CARIADで2023年に1,700人以上、高級車部門アウディで約400人、VW乗用車部門で700人以上を採用する。それぞれの募集人材は専用ウェブページで確認できる。
ドイツで特に不足しているのはIT関連技術者。ドイツIT・通信・ニューメディア産業連合会(BITKOM)の2022年11月発表(注2)によると、2022年にドイツでは全産業分野で13万7,000人分のIT関連技術者の求人が満たされていないという。これは、新型コロナウイルス感染拡大前の2019年の12万4,000人分を超え、過去最高だ。また、2022年にドイツ企業はIT関連技術者の採用までに平均7.1カ月を要したとされ、2021年の平均6.6カ月を上回った。
(注1)リスキリング(re-skilling)は、デジタル化などにより産業構造が変わる中で、職種転換も見据えて新たなスキルを習得すること。
(注2)BITKOMが2022年8~10月にドイツ国内企業854社(従業員数3人以上)を対象に行ったアンケート調査に基づく。
(高塚一)
(ドイツ)
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