欧州委、大型車のCO2排出基準規則の改正案発表、2030年以降の基準厳格化
(EU)
ブリュッセル発
2023年02月16日
欧州委員会は2月14日、大型車の二酸化炭素(CO2)排出基準に関する規則の改正案を発表した(プレスリリース)。改正案では、2030年以降に販売する大型車の新車からのCO2排出量について、現行規則で「2030年以降は2019年比で30%減」としていたのを「45%減」に目標値を引き上げ、2035年、2040年以降については、同じく2019年比で65%減、90%減とするとした。適用対象とする車種も増やし(注1)、特に都市部の路線バスは2030年以降、全ての新車をゼロエミッション車とするとした。欧州委は現行規則よりさらに厳しいCO2排出基準を設けることで、道路輸送部門のゼロエミッション化の促進や、EUの気候目標達成、大気汚染の改善につなげるとした。
排出削減に加えて、欧州委が改正案の目標として強調したのは「EUのエネルギー移行への貢献」だ。道路輸送部門の最終エネルギー消費量はEU全体の約3分の1に相当し、現在使用されている大型車はほぼ全てが内燃機関搭載車で、EUの輸入化石燃料への依存につながっていると指摘。新基準の導入によって、軽油など石油製品を中心に、化石燃料への需要を2031年から2050年にかけて約20億バレル削減できるとした。
大型車でもゼロエミッション車重視の姿勢貫く
欧州委は、産業界から根強い要望があった再生可能な低炭素燃料の利用については(2023年2月10日記事参照)、影響評価の結果、自動車メーカーや燃料事業者に加え、社会全体にとっても「コスト面で効率的ではない」との結論を出したとした。今回の改正案でその利用は考慮されていないものの、改正案では2028年に欧州委が進捗状況のほか、再生可能燃料の利用の可能性についてなどを見直すとしている。現時点では、2021年に提案した再生可能エネルギー指令の改正案(2021年7月15日記事参照、注2)などを通じて、低炭素燃料の利用推進を図っていくとし、大型車のゼロエミッション化に当たっては、電動バッテリーと燃料電池、水素燃料エンジンを重視する姿勢を鮮明に示した。EU企業の革新的なゼロエミッション技術や代替燃料インフラ整備への投資拡大を期待し、欧州のクリーンテック産業の活性化や国際競争力向上につなげる意欲も示した。
くしくも、今回の改正案が発表された2月14日、欧州議会が乗用車・小型商用車(バン)のCO2排出基準に関する規則の改正案(2022年10月31日記事参照)を正式に採択した(欧州議会のプレスリリース、採択されたテキスト)。今後、EU理事会(閣僚理事会)でも採択されると、EU官報に掲載の20日後に発効する。2035年以降の内燃機関搭載車の生産が実質禁止となった乗用車・バンに続き、大型車市場もCO2排出基準の厳格化によってゼロエミッション化が加速するのか、同改正案の欧州議会、EU理事会での審議の行方も注目だ。
(注1)これまで、中・大型トラックが対象だったが、小型トラック(ただし、最大重量5トン以上)、バス、被牽引自動車を追加。
(注2)ジェトロ調査レポート「『Fit for 55』におけるカーボン・プライシングと再生可能エネルギー関連政策(855KB)」(2022年2月)参照。
(滝澤祥子)
(EU)
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