2022年の米年末商戦の小売売上高、前年同期比5.3%増、伸びは事前予想下回る
(米国)
ニューヨーク発
2023年01月24日
全米小売業協会(NRF)は1月18日、2022年の年末商戦期間(11~12月)の小売売上高(自動車ディーラー、ガソリンスタンド、レストランを除く)が前年同期比5.3%増の9,363億ドルだったと発表した。NRFが11月時点で発表した前年同期比6~8%増の予想(2022年11月4日記事参照)を下回り、伸び率は過去最高を記録した前年(13.5%)から減速したものの、過去10年間の平均(4.9%増)と比較すると、やや上回る結果となった。ただ、商務省が同日に発表した小売売上高(季節調整値、前月比)は2022年11月に1.0%減、12月は1.1%減と低調な結果となった(2023年1月19日記事参照)。インフレ下で消費者側の予算分散の動きから年末商戦の前倒しが進んだほか、小売り各社では過剰在庫を削減するために大幅な値引き実施したことが消費需要を促した。
今回の発表について、NRFのチーフエコノミスト、ジャック・クラインヘンズ氏は、10月から実施された早期セールによって売り上げが前倒しされ、価格圧力や寒波、荒天の影響で、年末商戦はきわどい状況になる可能性があることは認識していたと述べた。
業種別にみると、ネット販売を含む無店舗小売りが前年同期比9.5%増の2,616億ドルと増加したものの、事前予測の2,628億~2,676億ドル(同10.0~12.0%増)を下回った。米国ソフトウエア大手アドビシステムズによると、ホリデーシーズン全体を通して、主要カテゴリーの多くで過去最高の値引きが実施され、インフレ下で価格に敏感な消費者を引き付けたと評価している。商戦期間中、玩具の割引率は前年同期の19%から34%に拡大したほか、電化製品は25%(同:8%)、コンピュータは20%(同:10%)に上り、消費を刺激した。
アドビ・デジタル・インサイツのリード・アナリスト、ビベク・パンドヤ氏は「消費者が食料品やガソリン、家賃などの高騰に対処していた時期に行われた年末商戦の割り引きが十分に強力なものだったため、シーズン全体を通して裁量支出を維持することができた」との見方を示した。アドビが18の分野で追跡している数値はインフレ調整されていないが、年末商戦のオンライン売上高は単に価格が上昇しただけでなく、新たな需要増によってもたらされたとしている。同社によると、2022年9月以降、オンライン価格は前年同月比で下落しており、「インフレを織り込んだとしても、根本的な消費需要は伸びている」と指摘した。
NRFによると、2022年通年の小売売上高は前年比7%増の4兆9,000億ドルで、事前予想の年間成長率6~8%の範囲内の伸びとなった。ただ、この数値には物価上昇の影響は反映されておらず、景気後退のリスクが高まっている中で、2023年の個人消費の行方が今後注目される。
(樫葉さくら)
(米国)
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