2022年の電源構成実績公表、政府は容量市場改革案を提示
(英国)
ロンドン発
2023年01月10日
英国の送電大手ナショナル・グリッドの電力系統子会社ナショナル・グリッドESO(NGESO)は1月6日、英国の2022年の電源構成実績を発表した。
2022年は年間を通じて天然ガスが電力供給の重要な役割を果たしたとしつつも、低炭素電源の整備が進み、特に風力発電の重要性が増していると説明(添付資料図参照)。11月2日には初めて20ギガワット(GW)以上の風力発電が記録された。この日の発電量のうち、70%以上がゼロカーボン電源(原子力、風力、水力、太陽光、蓄電)によるものだった。
また、2022年のうち、2月、5月、10月、11月、12月の発電実績で、ゼロカーボン電源による発電割合が50%を超えた。一方、石炭火力の発電割合は1.5%となり、10年前の2012年の実績43%と比較して大幅な減少となった。
電力のピーク需要に関して、最大需要電力は12月15日午後5時の46GWだった。
ネットゼロ移行に向け容量市場改革案を発表
ビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)省は1月9日、エネルギー安全保障の確保とネットゼロへの着実な移行に向けた容量市場改革案を発表した。
容量市場は、競争入札を通じてピーク電力需要を満たすのに十分な容量を確保し、将来の停電を防ぐ制度。英国では2014年の制度導入以来、再エネが発電システムの大きな割合を占めるようになり、容量市場の運用を巡る状況は変化している。化石燃料からより安価でクリーンなエネルギー源や技術への移行に対応し、供給の安定性を損なわずに2035年までの電力システムの脱炭素化の実現をサポートできるよう、今回の提案に至った。
具体的には、デマンドレスポンス(需要対応、DR)に関するスマート技術や小規模電力貯蔵技術などに対して、競争入札に参加できるようインセンティブを付与。また、容量市場の脱炭素化に向け、新しい排出量規制案を2034年10月1日から新設発電所に適用する。これにより、容量市場を通じて長期契約を受ける全ての新たな石油・ガス発電所は、炭素回収、水素活用、その他の低炭素技術の導入や稼働時間の短縮による発電設備の脱炭素化を通じた排出量削減が義務づけられる。加えて、需給逼迫時の供給未達に対するペナルティー制度を強化し、安定供給確保も図る。
今回の提案は3月3日まで意見公募が行われる。
(菅野真)
(英国)
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