元NATO高官のパベル氏がチェコ大統領選で勝利
(チェコ)
プラハ発
2023年01月31日
1月27~28日にチェコ大統領選挙の第2回投票が実施され、NATOの元高官のペトル・パベル氏(無所属)が、前首相で野党第1党ANO党首のアンドレイ・バビシュ氏を破って当選した。
大統領選挙は、上院選挙と同様の2回投票制(ブラック ジャック ブラック)。1月13~14日に実施された第1回投票では、パベル氏が35.40%、バビシュ氏が34.99%を獲得して第2回投票に進出した。第2回投票では、パベル氏が58.32%を獲得し、41.67%のバビシュ氏を第1回投票より大差で退けた。投票率は第1回投票が68.24%、第2回投票が70.25%で(チェコ統計局による1月14日付選挙結果)、2013年に始まった大統領直接選挙で過去最高の投票率を記録した。
ペトル・パベル氏(61歳)は陸軍軍事大学卒。2012~2015年にチェコ陸軍参謀長を、2015~2018年にはNATOの軍事委員長を務めた。その後は退役軍人として、新型コロナウイルス、医療、社会福祉、教育部門などにおける支援団体を設立し、政府への提言などを行っていた。
同氏の主張は、EU、NATO加盟国としてのチェコの積極的な関与、特に対ロシア制裁の強化、武器供与を含む積極的なウクライナ支援、同国のEU加盟支援、あるいはEUの「欧州グリーン・ディール」に関して基本的にチェコは義務として受け入れるべきといった点で現政権の方針と一致しており、政府と大統領の協力関係がより緊密化することが期待される。ペトル・フィアラ首相は1月28日、選挙結果を受けて「私自身が重要と考える価値観を代表する候補者が勝利したことをうれしく思う」とツイートした。
産業界も、パベル氏の当選を歓迎している。産業連盟のヤロスラフ・ハナーク会長は、新大統領が民主主義的価値観と憲法を尊重し、チェコが持つオープンで信頼できる近代国家のイメージを強化することを期待すると述べている(1月28日付産業連盟の発表)。
大統領の任期は5年。憲法が定める主な権限には、(1)閣僚の任免、(2)下院の招集・解散、憲法裁判所裁判官任命、(3)法律の署名、議会への差し戻し、(4)中央銀行理事任命、などがある。(5)国際条約交渉、批准、(6)大使、公使の任命、召還、(7)裁判官の任命、(8)恩赦の発令については、首相の同意を必要とする。また憲法は、同一の人物が2度を超えて連続して大統領に選出されることを禁じている。そのため、2013年から2期連続で大統領職を務めるミロシュ・ゼマン大統領は、今回選挙に立候補する資格がなかった。
(中川圭子)
(チェコ)
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