スナク英首相、年頭演説で5つの優先事項を発表
(英国)
ロンドン発
2023年01月06日
英国のリシ・スナク首相は1月4日、2023年の年頭演説を行い、その中で5つの優先事項を打ち出した。優先事項は以下のとおり。
- 2023年中にインフレ率を半減、生活費の上昇を緩和し、人々の家計を安定させる。
- 経済を成長させ、国内全体でより高賃金の雇用や機会を創出する。
- 政府債務を確実に削減し、将来にわたり公共サービスを提供する。
- 国営医療サービス(NHS)の待機リストを削減し、人々が必要な治療を迅速に受けられるようにする。
- 小型船による英国への入国を禁止する新法案を定め、不法入国者を取り締まり迅速に国外へ退去させる。
スナク首相は演説の中で、イノベーションをあらゆる政策の中核に据える必要があると述べ、人工知能(AI)、ライフサイエンス、量子技術、フィンテック、グリーン技術といった英国に強みがある分野の強化に向け、研究・開発への公的資金を200億ポンド(約3兆1,800億円、1ポンド=約159円)まで増加するとした。さらに、労働者への課税負担を削減するほか、復職が可能な者を支援する手段を検討すると述べた。
続けて、成長促進、雇用創出に向けて地方部での投資を拡大し、レベリングアップ(地域活性化)に向けた公約を実現するとした。その一環として、小学校(プライマリースクール)の教育支援やベストプラクティスの共有、技術教育や生涯学習、職業訓練などを拡大すると述べた。加えて、数学を教育制度の目標の中心に据えるとして、イングランドのすべての生徒が18歳まで何らかのかたちで数学を学習することを目指すとした。
翌5日には、野党・労働党のキア・スターマー党首が演説した。スナク首相の演説を「解決策のない説明」と批判。短期的なマインドセットによる政治からの脱却を掲げ、労働党として英国政府を現代化、より明確かつ測定可能な目標に基づくものにするとし、今後数週間でマニフェストの基礎となるミッションを発表するとした。さらに、EU離脱派が掲げた「主権を取り戻す(Take Back Control)」というスローガンを解決策に変えるとし、地域社会の権限を拡大させると述べた。
調査会社ユーガブが2022年12月20~21日に実施した調査では、保守党への投票意向を示した回答が24%だったのに対し、労働党は48%と20ポイント以上の差がついている。
(山田恭之)
(英国)
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