米議会、外国投資から農業を保護する法案を超党派で起草

(米国、中国)

ニューヨーク発

2023年01月27日

米国連邦議会のケビン・クレイマー上院議員(共和党、ノースダコタ州)は1月25日、上下両院の超党派で米国の農業を外国投資から保護する「外国敵対勢力リスク管理(FARM)法案」を共同起草したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。

FARM法案は、外国からの投資が米国の安全保障に与える脅威を審査する対米外国投資委員会(CFIUS)の委員に農務長官を加えることや(注)、CFIUSの監視分野に農業を加えること、農務省と政府説明責任局(GAO)から議会に対して外国から米国農業分野への投資動向を報告することを義務付ける内容となっている。クレイマー上院議員は声明で「食料安全保障は国家安全保障だ。政府は地政学的戦略や米国のサプライチェーン保護、米国の農畜産業の支援などさまざまな理由から、外国の敵対勢力による農業分野への投資についてリスク評価を入念に行うべきだ」と述べている。共同起草者のトミー・タバービル上院議員(共和党、アラバマ州)は「ここ数年、外国勢力、特に中国による農地や食品企業の買収が急増している」として、危機感の背景に中国の存在があることを指摘している。下院でも同じ内容の法案が起草されている。

安全保障の観点で農業分野への外国投資が話題となった件として、2013年に中国食肉加工大手の双匯国際が米国豚肉生産大手のスミスフィールド・フーズを買収した案件が挙げられる(2015年4月3日記事参照)。一部議員からは安全保障上のリスクがあるとの懸念が示されていたが、CFIUSは買収を承認した。最近では、中国化学大手の阜豊集団がノースダコタ州の農地を買収してトウモロコシ加工工場を建設しようとした件について、この農地が米国の空軍施設に近接していたため、CFIUSが審査を行っていた。最終的にCFIUSは2022年12月、この件は審査対象の案件ではないとして買収を承認したが、クレイマー上院議員らはその判断を批判していた。このような経緯から、議会で法案起草の機運が高まったと考えられる。今後の法案審議の行方が注目される。

(注)CFIUSは財務長官が委員長を務め、司法長官、国土安全保障長官、商務長官、国防長官、国務長官、エネルギー長官、通商代表部(USTR)代表、ホワイトハウスの科学技術政策局長が委員となっている。

(磯部真一)

(米国、中国)

ビジネス短信 618ab0d389c00ffc