フィンランド、FSRUが南部に着港、今冬のガス需要に対応

(フィンランド、ロシア)

ロンドン発

2023年01月10日

フィンランドの国営ガス輸送事業者ガスグリッドは2022年12月28日、浮体式LNG(液化天然ガス)貯蔵・再ガス化設備(FSRU)を備えた専用船エグゼンプラー号がフィンランド南部のインコ―港に無事着港したと発表外部サイトへ、新しいウィンドウで開きますした。同社は8月に開始した同港でのFSRU向けの港湾開発が完了したことを、12月20日に発表していた。2023年1月中旬から産業、エネルギー生産や家庭での利用開始が期待される。

エグゼンプラー号は、米国企業エクセレレート・エナジーから10年間、4億6,000万ユーロでガスグリッドに貸し出される。最大容量はLNG6万8,000トン分で、年間供給量は約40テラワット時(TWh)超と従来の国内ガス需要(年間約25TWh)を上回る。月に2~3回の頻度で世界各地からタンカー船がLNGを輸送し、エグゼンプラー号上で再気化された上で供給網に送られる。なお、同設備を利用したガスは、パイプラインを介し、バルト諸国やポーランドにも供給が可能。また、複数の国内小規模LNGターミナルにも供給する予定。

2022年10月には国内南東部のハミナ港でLNGターミナルが完成し、商業運転を開始した。同施設は、ガス供給網に直接接続される初のLNGターミナルとして、2017年10月から建設が始められていた。年間供給量は約1.7TWhとされている。

フィンランド統計局と天然資源センターの2022年5月の共同発表によれば、2021年のエネルギー源別の総エネルギー消費量におけるロシアからの輸入の割合は34%(速報値)で、ロシアから輸入される主なエネルギー資源は石油、電力および天然ガスなどであり、輸入依存度が最も高かったのは天然ガスの92%だった。天然ガスがフィンランド国内の総エネルギー消費量に占める割合は全体の5%ほどにとどまるが、ロシアによるウクライナ侵攻後、政府はエネルギーなどの供給の安全保障の改善に向けた対策を発表しており、LNGターミナルはロシアへのガス依存からの脱却に資するとして注力している。

なお、フィンランドでは化石燃料から再生可能エネルギーなどへの転換が急速に進んでいる。2011年時にエネルギー消費の50.2%を占めた化石燃料(石油・石炭・天然ガス・泥炭などを含む)の割合は2021年には34.3%へと減少、再生可能エネルギーの割合は同期間に28.3%から42.1%へと増加している(添付資料図参照)。

(半井麻美)

(フィンランド、ロシア)

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