カナダ政府、「ファースト・ムーバーズ・コアリション」への参加表明
(カナダ、日本、米国、デンマーク、インド、イタリア、ノルウェー、ドイツ、シンガポール、スウェーデン、英国)
米州課
2023年01月19日
カナダ政府は1月18日、ゼロカーボン技術の世界的な商業化を目指すファースト・ムーバーズ・コアリション(FMC)への政府パートナーとしての参加を表明した。同枠組みを通じて、カナダのクリーンテック企業にグローバルな機会を提供しつつ、環境保護や重要な気候目標の推進、持続可能な経済へ前進に向けて取り組むという政府の強いコミットメントをあらためて示した。
FMCは、2021年11月にスコットランド・グラスゴーで開催された国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)で米国政府が世界経済フォーラム(WEF)と協力して立ち上げた枠組みで、排出量削減が困難な8つの産業セクター〔アルミニウム、航空、二酸化炭素(CO2)除去、セメント・コンクリート、海運、鉄鋼、トラック輸送、化学〕の革新的なクリーンテクノロジーの早期市場を創出する企業の連合体だ。WEFによると、カナダ以外に、デンマーク、インド、イタリア、日本、ノルウェー、ドイツ、シンガポール、スウェーデン、英国、米国の10カ国が政府パートナーとして、また、69の多国籍企業がメンバーとして参加している。
FMCはメンバー企業の定めた購入コミットメントをフォーミュラ化し、同コミットメントに対する需要を集約することを最大の目的としているが、併せて、企業のコミットメント達成に向け、企業とサプライヤーを結びつけるワークショップの開催や、コミットメントの実行を成功させるのに必要な知識やツールの開発、オフテイク契約のテンプレートの作成、メンバーの購入や投資のリスクを軽減するための金融業者との関与などをはじめとしたさまざまな支援も行う。
また、メンバー企業は、野心的な取り組みを行う対象セクターを最低1つ設定し(注)、セクターごとのワーキンググループへの参加を通じて、ネットゼロ目標推進の組織活動に参加する。
カナダ政府は今回のFMC参加表明前にも既にFMCの動向に連動した活動を行っており、2022年11月に、FMCが国連気候変動枠組み条約第27回締約国会議(COP27)でFMC独自のセメント・コンクリート誓約書を発表したのと時を同じくして、同業界の炭素排出量削減支援のため、カナダセメント協会と共同で策定した「2050年までのネットゼロ炭素コンクリートへのロードマップ」を発表している。
カナダのFMC参加について、フランソワフィリップ・シャンパーニュ・イノベーション・科学・産業相は「炭素排出量ゼロの世界は、主要な技術を商業規模にすることによってのみ達成が可能だ。FMCへの参加は産業の脱炭素化を支援し、クリーン技術の採用を奨励し、カナダの起業家がグリーン経済で活躍できるよう支援するという政府のコミットメントを反映するものだ」と述べている。
(注)FMCのサイトに企業が設定した重点セクターごとにグループ化されたメンバー企業一覧が掲載されている。現時点でアルミニウム、航空、CO2除去、セメント・コンクリート、海運、鉄鋼、トラック輸送の7セクターがあり、海運セクターには商船三井が日本企業として初めて参画している。2023年11~12月の国連気候変動枠組み条約第28回締約国会議(COP28)を機に化学のセクターが追加される予定。
(高山さわ)
(カナダ、日本、米国、デンマーク、インド、イタリア、ノルウェー、ドイツ、シンガポール、スウェーデン、英国)
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