英政府、中国系企業による英半導体工場の買収撤回を命令
(英国、中国、オランダ)
ロンドン発
2022年12月06日
英国政府は11月16日、国家安全保障・投資法()に従って、中国企業傘下であるオランダの半導体製造企業ネクスペリアによる、ウェールズのマイクロチップ工場ニューポート・ウエハー・ファブの買収の撤回命令を発表した。
ネクスペリアは、2019年に中国の半導体製造企業ウイングテックの子会社となっている。同社は2021年7月5日にニューポート・ウエハー・ファブの資本の86%を追加取得し、100%所有していた。しかし、英国のビジネス・エネルギー・産業戦略(BEIS)相は、この買収を国家安全保障のリスクとみなし、追加取得分の売却を命じた。
今回の発表に対し、ネクスペリア側は驚きを示している。同社によれば、買収は過去2回の安全保障上のレビューを経ており、政府が指摘する国家安全保障上のリスクは認められないとした。さらに、政府は同社従業員の生活や納税者の資金を不必要にリスクにさらしていると批判し、命令に対して異議申し立てをすると断言した。
1月4日に施行された国家安全保障・投資法は、国家安全保障の保護のため、BEIS相に買収案件の精査や介入の権限を与える。同相は精査を経て、最終命令を下す。買収への条件付加、完全なる阻止を命じることができるほか、既に買収が完了している場合にもその撤回を命じることができる。
施行以来、計10件に対しての最終命令が下されており、うち中国系企業による買収については本件を含めて3件が阻止・撤回されている(注)。
英中関係は新時代へ
リシ・スナク首相は11月28日、ロンドンで演説を行い、中国に対する今後の戦略について語った。英中関係の「黄金時代」は終焉(しゅうえん)を迎えていると述べ、同国を「体制上の課題」と位置付けた。一方で、同国が世界経済や気候変動に関しては重要な存在であるとして、米国、カナダ、オーストラリア、日本などと連携し、外交などの手法を通じて中国との競争を管理するとした。
(注)うち1件は知的財産の取得。
(レイナー・あや)
(英国、中国、オランダ)
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