米財務省、人権侵害で中国の漁業事業者などを制裁対象に追加
(米国、中国)
ニューヨーク発
2022年12月12日
米国財務省は12月9日、グローバル・マグニツキー人権問責法(注1)に基づき、中国の8つの漁業事業者や2人の関連人物、それらが所有する157隻の船舶を金融制裁対象の「特別指定国民(SDN)」に指定した。
米国のジョー・バイデン大統領は6月に違法・無報告・無規制(IUU)漁業と関連する強制労働に対処するための国家安全保障に関する覚書に署名しており、IUU漁業への対応策を強化する姿勢を明らかにしていた(バイデン米大統領、カジノ ブラック)。財務省は、今回の制裁対象への追加はこの覚書を受けた措置の一環としており、同省のブライアン・ネルソン次官(テロ・金融インテリジェンス担当)は「今回の指定は、われわれがどれほど真剣に違法漁業を問題視し、深刻な人権侵害を行った者の責任追及に重きを置いているかを証明するものだ」との声明を出している。今回SDNに指定された事業者の中には、中国の子会社を通じて約100隻の船舶や約2,000人の船員を運用しているケイマン諸島籍のピンタン・マリン・エンタープライズが含まれている。同社は米証券取引所ナスダックに上場しており、財務省はナスダック上場企業のSDN指定は史上初と強調している。SDNに指定された対象には、在米資産の凍結や米国人(注2)との資金・物品・サービスの取引禁止という制裁が科される。また、SDNが直接または間接的に50%以上所有する事業体も当該制裁の対象となる。今回指定したSDNの詳細は財務省のウェブサイトで確認できる。
また、財務省は12月9日が国際反腐敗デー、12月10日が人権デーであることを受けて、腐敗や人権侵害を理由に、北朝鮮、エルサルバドル、グアテマラ、ギニア、イラン、マリ、フィリピン、ロシア、中国(チベット自治区)の9カ国・地域の40以上の個人・事業体についてもSDNに指定している。
(注1)2016年成立の米国法で、国籍を問わず人権侵害や汚職に関与していると特定された外国人に対して、経済制裁や米国への入国拒否を行う権限を大統領に与える法律。
(注2)米国市民、米国永住者、米国の法律に基づく、もしくは司法権が及ぶ域内に存在する法人(外国支所も含む)、もしくは米国内に存在するあらゆる個人を指す。
(磯部真一)
(米国、中国)
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