配電部門における次期規制期間の収入上限が確定
(英国)
ロンドン発
2022年12月06日
英国のガス・電力市場局(Ofgem、エネルギー部門の規制機関)は11月30日、配電部門の次期規制期間(2023/2024年から2027/2028年までの5年度間)における各事業者の収入上限が確定したことを発表した。
英国のエネルギーネットワーク部門(注)では、RIIO(Revenue = Incentives + Innovation + Outputs)と呼ばれる制度により、各事業者の事業計画における収入見通しに基づき、Ofgemが審査を通じて収入上限を定める。これにより、Ofgemは各事業者に対し、支出・投資可能な額を目的ごとに規制する。配電部門においては現在の規制期間(RIIO-ED1)が2015/2016年度から2022/2023年度までの8年間で設定されており、今回は次期規制期間である2023/2024年度から2027/2028年度までの5年度間の上限が確定した(RIIO-ED2)。対象となる配電事業者6社は、2021年12月にOfgemへ事業計画案を提出しており、その後2022年6月にOfgemより審査後の決定案が発表された。
今回の収入上限設定に関し、Ofgemは、輸入化石燃料への高い依存から、よりクリーンで安価、かつ安全な国産のエネルギー源への移行を支援するための電力ネットワークへの投資に焦点を当てたとしている。電気自動車(EV)、ヒートポンプの普及、太陽光や風力など地域性の高い低炭素電源の接続支援に向けた、ネットワーク改修向け資金〔約31億ポンド(約5,115億円、1ポンド=約165円)〕や、配電部門におけるグリーンエネルギー関連のイノベーション基金や小規模プロジェクト向け資金も確保。一方で、配電事業者の利益を制限し、運転費用の効率を高めるよう求めることで、顧客が配電事業者に支払う費用の増額は行わない。Ofgemが認可した最終的な収入上限は、各社が申請した金額(事業計画における収入見通し)に対して平均11.8%の削減となった(添付資料表参照)。
各社のコストは、収入上限の範囲内で定められたネットワーク料金(託送料金)として、電気料金によって広く消費者より回収される。
RIIOの規制期間中は、毎年度認められた収入上限と実際のコストのレビュー(年次反復プロセス)が行われる。その差額は一部が翌年度以降、電気料金を通じて消費者に還元され、残りは事業者の利益となる。このため、事業者によるコスト低減インセンティブが働く制度とされている。
なお、現行の送電・高圧ガス導管部門の料金規制(RIIO-T2)および低圧ガス導管部門の料金規制(RIIO-GD2)の規制期間はそれぞれ2021/2022年から2025/2026年までの5年度間で設定されている。今回、RIIO-GD2の期中における年次反復プロセスの結果も発表した。
(注)送電・高圧ガス導管、配電、低圧ガス導管。
(菅野真)
(英国)
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